ラリー、3往復目。
 セットポイント。
 ……鼓動がどくどくなっているのがわかる。
 今俺。
 生まれてから一番、ドキドキしてる。
 生まれてから一番、ワクワクしてる。
 ドキドキでワクワクでやべえ、たまんねえ……!
 相手からの強いスパイク。
 身の毛がゾワっとよだつ。
 それを、城崎先輩が、レシーブする。
 ドキドキして破裂しそうな心臓を右手で少し抑えながら、俺は、後衛から、助走をつける。
 友田が、トスを上げる!
 前で、千野が空振りフェイントをかける。
 来る。
 来る。
 右足で思いっきり踏み切り。
 そして。
 俺が。
 飛ぶ。
 トスが、少し、俺のタイミングとずれている。
 でも。
「うおおおおおおおっっっ!」
 今の俺なら。
 合わせに、行ける!
 レフト! スペースがある!
 やばい!
 心臓、破裂しそう!
 ドキドキしてる!
 ワクワクしてる!
 あの時の!
 あの時の、PKの時の感情とおんなじだ!
 ボールが手に当たる。
 ずっしりと重い。
 この一撃で、全てが決まる……!
「うおおおおおおおおおお!」
 やばい、心臓バクバク言ってる。
 脳汁ドバドバ出てる。
 超快感。
 最高に気持ちいい。
 腕に全神経を集中させ、一気に下へと振り下ろす。

 
 全てがスローモーションみたいだ。
 ボールは、弾丸のように、相手のコートの地面に向かって、飛んでいく。
 やばい。
 心臓が疼く。
 疼いてる。
 来てる。
 俺の時代、来てる。
 やべえ!
 決まる!
 俺の、が。
 俺の、夢が!
 叶うかどうか。
 今から。
 この瞬間に、決まる。
 ボールは……。
 ……コート内の地面を、叩きつけた!
「よっしゃあああああああ!」
 心臓、ドックドク言ってる!
 目から水がドクドクと流れ落ちる。
 声は枯れている。
 気づいたら、俺の体はみんなに抱きつかれている。
 そして、俺の拳は天に向かって掲げられている。
 俺たちは、春高バレーに、全国大会に、出場することが決まった。