国語のテストが終わり、次は理科のテスト。
「なあ、学年1位の隆斗。理科、どこが出ると思う」
「だからその学年1位のってやつ、ちょっと恥ずかしいからやめて。いや、わからん……等加速度直線運動とか?」
知らない言葉が出てきた。
「なんだそれ、等速直線運動と違うのか?」
「いや、おれも実はよくわからん……けど、ノートの端の方に書いてあったから、この言葉が出るかもしれない……」
「意味を教えてくれよー」
「それは……わからん。けど、矢印が横に書いてあって、物が落ちるとき、って書いてある」
「始め」
テストが開始した。
力学の問題が並んでいる。
順調に上から解いていった。
第5問
ガリレオ・ガリレイは、イタリア・ピサの斜塔から、質量が違う2つの物体を同じ高さから同時に手を放して落とす実験を行った、という伝説がある。その時、2つの物体は、等しい時間で地面に着いた。その理由を答えよ。
……質量が違う2つの物体が、同じ高さから落として同時に落ちた。
なんで。
ずっとおんなじ速度で落ちてるから?
いや、手から落とした瞬間は速度0だ。
考えろ。
発想を転換しろ。
……ああ、そういうことか。
加速しててその加速が同じってそんだけだな。
隆斗が加速とか言ってたな。
この問題は楽勝。少し考えればわかる。
テストが終わって、風が吹く。
少し、思う。
あいつらとは。
隆斗と、太雅と、昌磨とは。
高校に入ったら。別れて、しまうのかな。
『なあ、めっちゃワクワクしない……?』
『……確かに、少しだけ……ワクワクする』
『……だろ! だろ! ワクワクするだろ! 次の体育では、おれは真ん中のポジションに着く! だから』
『……じゃあおれは、フォワードにつくわー。りゅーとー、最高のパスをくれよー』
わあ、と隆斗は満面の笑みで俺を見つめる。
『当たり前だ。その代わり、最高のシュートを打てよ!』
『……ああ』
……嫌だなあ。
『おれたちの最高の連係プレーだぜ!』
『……ああ! 最高! ……ねえ、隆斗』
『なんだよー!』
『俺、今、久々に……めっちゃ、ドキドキしてる』
『それ、最高の感情だよ! 俊太!』
『……ああ!』
……ずっと、一緒にいたいなあ。
友達を、手放したくないなあ。
離れたく、ないなぁ……。
……熱くなる、感情。
サッカーで確かに感じた、感情。
バレーで昔感じた、感情。
もし。
もしも。
春高に出られたのならば。
その感情は、どんなもんなんだろう。
その理想が叶えられたら、死んでもいいくらいの。
でも。
それは叶えられないことくらい知っている。
俺は、バレーが弱い……。
それなのに。
無理な理想を掲げるたびに。
辛く、悲しくなる。
本当に、辛い。
悲しい。
最近、冬月になっている時にも、バレーを思い出す。
せっかく忘れようと思って、現実逃避をしようと思って歌い手活動を始めたのに。
こんな感情になったのは、なんでだ。
隆斗が、気づかせてきたんだ。
……隆斗の、せいだ。
隆斗の、せいだ。
あいつさえ。
あいつさえ、いなければ。
俺は、こんな感情には。
ならなかった、はずなのに。
「なあ、学年1位の隆斗。理科、どこが出ると思う」
「だからその学年1位のってやつ、ちょっと恥ずかしいからやめて。いや、わからん……等加速度直線運動とか?」
知らない言葉が出てきた。
「なんだそれ、等速直線運動と違うのか?」
「いや、おれも実はよくわからん……けど、ノートの端の方に書いてあったから、この言葉が出るかもしれない……」
「意味を教えてくれよー」
「それは……わからん。けど、矢印が横に書いてあって、物が落ちるとき、って書いてある」
「始め」
テストが開始した。
力学の問題が並んでいる。
順調に上から解いていった。
第5問
ガリレオ・ガリレイは、イタリア・ピサの斜塔から、質量が違う2つの物体を同じ高さから同時に手を放して落とす実験を行った、という伝説がある。その時、2つの物体は、等しい時間で地面に着いた。その理由を答えよ。
……質量が違う2つの物体が、同じ高さから落として同時に落ちた。
なんで。
ずっとおんなじ速度で落ちてるから?
いや、手から落とした瞬間は速度0だ。
考えろ。
発想を転換しろ。
……ああ、そういうことか。
加速しててその加速が同じってそんだけだな。
隆斗が加速とか言ってたな。
この問題は楽勝。少し考えればわかる。
テストが終わって、風が吹く。
少し、思う。
あいつらとは。
隆斗と、太雅と、昌磨とは。
高校に入ったら。別れて、しまうのかな。
『なあ、めっちゃワクワクしない……?』
『……確かに、少しだけ……ワクワクする』
『……だろ! だろ! ワクワクするだろ! 次の体育では、おれは真ん中のポジションに着く! だから』
『……じゃあおれは、フォワードにつくわー。りゅーとー、最高のパスをくれよー』
わあ、と隆斗は満面の笑みで俺を見つめる。
『当たり前だ。その代わり、最高のシュートを打てよ!』
『……ああ』
……嫌だなあ。
『おれたちの最高の連係プレーだぜ!』
『……ああ! 最高! ……ねえ、隆斗』
『なんだよー!』
『俺、今、久々に……めっちゃ、ドキドキしてる』
『それ、最高の感情だよ! 俊太!』
『……ああ!』
……ずっと、一緒にいたいなあ。
友達を、手放したくないなあ。
離れたく、ないなぁ……。
……熱くなる、感情。
サッカーで確かに感じた、感情。
バレーで昔感じた、感情。
もし。
もしも。
春高に出られたのならば。
その感情は、どんなもんなんだろう。
その理想が叶えられたら、死んでもいいくらいの。
でも。
それは叶えられないことくらい知っている。
俺は、バレーが弱い……。
それなのに。
無理な理想を掲げるたびに。
辛く、悲しくなる。
本当に、辛い。
悲しい。
最近、冬月になっている時にも、バレーを思い出す。
せっかく忘れようと思って、現実逃避をしようと思って歌い手活動を始めたのに。
こんな感情になったのは、なんでだ。
隆斗が、気づかせてきたんだ。
……隆斗の、せいだ。
隆斗の、せいだ。
あいつさえ。
あいつさえ、いなければ。
俺は、こんな感情には。
ならなかった、はずなのに。