試合時間残り2分。0対0。
相手のフォワード、サッカー部の岳人がゴール前まで攻めてきた。
そこを。
長身バスケ部のディフェンダー、太雅が止める。
そのまま、ボールは一番後ろの大雅から、真ん中の隆斗へと送られた。
フォワードの俺は、それを見る。
周りを見る。オフサイドは取られなさそうだ。
そして。
隆斗から、縦パスが送られる。
ボールが、俺の右足に……。
少しズレた。
大丈夫。
俺は、足を思いっきり伸ばした。
そして、ボールは、おれの右足に……。
♢
小学校最後の大会。
3セット目。
このセットを取ったら、勝ち。
接戦のなか、セットポイント。
キュッキュッと、シューズの擦れる音が響く。
体育館内の時間が、スローモーションになっているみたいだった。
ネットから、ボールが、智樹に向かって勢いよく飛んでくる。
智樹は、すぐさまレシーブをする。少し後ろによろける。
そのボールは、ふんわりと、セッターの勇真へとつながった。
そして、トスが上がる。
俺は、後ろにある手を下から前に振り出しながら、右足で思いっきり踏み込み、飛んだ。
前衛の裕太が、フェイントで、空振りをする。
そして、俺に、俺の右手に、トスが、ボールが、当たる……。
♢
……まるで、俺のために、みんなが支えてくれたような気がした。
こうして、最後の力を振り絞って、俺に、パイプを、つないでくれた。
今も、そうだ。
太雅も、隆斗も。
俺に、ボールをつないでくれた。
俺の右足に、なんとか、サッカーボールが当たる。
瞬間。
サッカー部の天野が、無理やりボールを奪いに来る。
足が、引っかかる。
俺は、そのままバランスを崩し、倒れこんだ。
「ピィーッ! P K!」
先生は、ペナルティマークを指さしている。
そのまま天野に注意をした後、ボールをマークの上に置いた。
隆斗が俺に告げた。
「俺はお前に、最高のパスを出したんだ」
「……当たり前。決めるよ」
俺は、位置に着いた。
「ピィーッ!」
助走をつけ、足を振りかぶった。
♢
『うおおお!』
相手のブロックの向こう、リベロの少し右。スペースを見つけた。そこをめがけて、最後の力を振り絞って。おれの、最強の体力を持つ、最高のスパイクで。
『うらあああああああああ!』
そのまま、弾丸のようにボールはスペースに向かっていく。
そして、地面を叩きつけた……!
『よっしゃあああああああ!』
♢
……そんな夢、叶わないのに。
なんで、今。
俺は。
こんなに、熱くなっているんだろう。
「うおおおおおおおお!」
隆斗の、最高のパスを。
血液のように繋がれた、その最高のパスを。
俺の、最高のシュートで。
ボールは、枠内の左上へと、弾丸のように飛んだ。
そして。
ゴールに、入った。
「やったあああああああ!」
おれは後ろを向き、みんなのところに走っていった。
隆斗が来てくれた。
「おれたちの最高の連係プレーだぜ!」
「……ああ! 最高! ……ねえ、隆斗」
「なんだよー!」
「俺、今、久々に……めっちゃ、ドキドキしてる」
「それ、最高の感情だよ! 俊太!」
「……ああ!」
俺たちは、ハイタッチをした。
みんなから血液のようにして送られてきたボールを、最後に自分が、決める。
なんかわかんないけど。
マジで、快感。
でも。
マジで辛い。
「でもさー、りゅーと、なんでだろー、なんか、こんな感情を思い出すたびに、すごく、ものすごく……辛く、悲しくなる……」
「俊太……?」
「……いや、なんでもねー。ごめん。いいパスありがとな」
「……ああ」
相手のフォワード、サッカー部の岳人がゴール前まで攻めてきた。
そこを。
長身バスケ部のディフェンダー、太雅が止める。
そのまま、ボールは一番後ろの大雅から、真ん中の隆斗へと送られた。
フォワードの俺は、それを見る。
周りを見る。オフサイドは取られなさそうだ。
そして。
隆斗から、縦パスが送られる。
ボールが、俺の右足に……。
少しズレた。
大丈夫。
俺は、足を思いっきり伸ばした。
そして、ボールは、おれの右足に……。
♢
小学校最後の大会。
3セット目。
このセットを取ったら、勝ち。
接戦のなか、セットポイント。
キュッキュッと、シューズの擦れる音が響く。
体育館内の時間が、スローモーションになっているみたいだった。
ネットから、ボールが、智樹に向かって勢いよく飛んでくる。
智樹は、すぐさまレシーブをする。少し後ろによろける。
そのボールは、ふんわりと、セッターの勇真へとつながった。
そして、トスが上がる。
俺は、後ろにある手を下から前に振り出しながら、右足で思いっきり踏み込み、飛んだ。
前衛の裕太が、フェイントで、空振りをする。
そして、俺に、俺の右手に、トスが、ボールが、当たる……。
♢
……まるで、俺のために、みんなが支えてくれたような気がした。
こうして、最後の力を振り絞って、俺に、パイプを、つないでくれた。
今も、そうだ。
太雅も、隆斗も。
俺に、ボールをつないでくれた。
俺の右足に、なんとか、サッカーボールが当たる。
瞬間。
サッカー部の天野が、無理やりボールを奪いに来る。
足が、引っかかる。
俺は、そのままバランスを崩し、倒れこんだ。
「ピィーッ! P K!」
先生は、ペナルティマークを指さしている。
そのまま天野に注意をした後、ボールをマークの上に置いた。
隆斗が俺に告げた。
「俺はお前に、最高のパスを出したんだ」
「……当たり前。決めるよ」
俺は、位置に着いた。
「ピィーッ!」
助走をつけ、足を振りかぶった。
♢
『うおおお!』
相手のブロックの向こう、リベロの少し右。スペースを見つけた。そこをめがけて、最後の力を振り絞って。おれの、最強の体力を持つ、最高のスパイクで。
『うらあああああああああ!』
そのまま、弾丸のようにボールはスペースに向かっていく。
そして、地面を叩きつけた……!
『よっしゃあああああああ!』
♢
……そんな夢、叶わないのに。
なんで、今。
俺は。
こんなに、熱くなっているんだろう。
「うおおおおおおおお!」
隆斗の、最高のパスを。
血液のように繋がれた、その最高のパスを。
俺の、最高のシュートで。
ボールは、枠内の左上へと、弾丸のように飛んだ。
そして。
ゴールに、入った。
「やったあああああああ!」
おれは後ろを向き、みんなのところに走っていった。
隆斗が来てくれた。
「おれたちの最高の連係プレーだぜ!」
「……ああ! 最高! ……ねえ、隆斗」
「なんだよー!」
「俺、今、久々に……めっちゃ、ドキドキしてる」
「それ、最高の感情だよ! 俊太!」
「……ああ!」
俺たちは、ハイタッチをした。
みんなから血液のようにして送られてきたボールを、最後に自分が、決める。
なんかわかんないけど。
マジで、快感。
でも。
マジで辛い。
「でもさー、りゅーと、なんでだろー、なんか、こんな感情を思い出すたびに、すごく、ものすごく……辛く、悲しくなる……」
「俊太……?」
「……いや、なんでもねー。ごめん。いいパスありがとな」
「……ああ」