空が澄んでいる。
 おれは、家の倉庫から自転車を出し、すぐ近くのコンビニへと向かった。
 マジであちい。早く、コンビニの中に避難しよう。
 そのために立ちこぎをした。
 そうすると、もっと暑い。
 何とかコンビニに着いた。ジュース。ジュースが欲しい。
 そう思ってすぐに冷蔵庫に向かうと、そこには暑くて苦しそうにしている昌磨がいた。
「昌磨、あちいよー」
「おれもだよー、隆斗ー」
 昌磨は、冷蔵庫を開けながら、話し続ける。
「じゃあとりあえず、もうパッとジュース探そうぜ!」 
 後ろから俊太の声がした。 
「おはよー隆斗―」
「おー、おはよう! お前もなんかジュース選ぶか?」
「あー、どうしようかなー」
 俊太が迷い始めたころにはもう昌磨はレジに並んでいた。そして、すぐに外へと飛び出し、一口飲んで、また、中に入ってきた。
「飲んできたぜー!」
 はっはっはっ、と、勇気が注入された王様みたいな話し方を見て、俊太はフフッと笑う。
「お前……」
「ごめん遅れたー!」
 そこへ、太雅がやってきた。
「じゃあ、行くかー」
 昌磨がそういうと、太雅は焦る。
「まってー、おれもジュース買うー!」

 自転車で向かう途中、大きな交差点に止まった。
「あち~なまだ」
 太雅がスポドリを飲みながら、赤信号を睨みつけてそう言った。
「それな、まだ8月終わったばっかじゃねーか」
 おれはそう言って、青に変わるのを確認して、ペダルに足をかける。
 なんか、校区外に遊びに行くときって、わくわくする。
 海沿いの道へと出た。
 キラキラしていて、海の音がザザーンと聞こえる。逆側には食堂が並んでいる。
 船、飛行機、そして、広い海。
 そこを走っていると、なんか。
 生きてるー! って、感じがする!
「あれじゃね?」
 昌磨がボーリングの大きなピンを指した。
「よっしゃー!」
 太雅の合図で駐車場に入り、駐輪場を見つけて自転車を停め、鍵を締める。全員準備できたところで、中に向かった。
「涼しー!」
 思わずそう叫んでしまった。
 エスカレーターを上がり、ゲーセンをスルーして、ボーリングのカウンターに行った。茶髪でツイストパーマをかけたお兄さんが立っている。
「何ゲームにしますかー?」
 すかさず昌磨が入る。
「とりあえず3ゲームで」

 3ゲーム目。ボーリングゲームは完全に俊太と昌磨の勝負になっていて、おれと太雅はもう、100点以上得点することを諦めていた。
「なあ、太雅」
 おれは、相談を持ち掛けてみた。
「どうした、隆斗」
 なぜ。
 なぜ。
「何で、俊太と昌磨って、ボーリングが強いの?」
「俊太は運動神経がいい。昌磨は野球部」
「なるほど」
 物事には、理由がある。
 それを、「神はサイコロを振らない」なんて表現した人がいたっけ。
 そっか。
 何で。
 なぜ。
 そんなふうに考えていけば。
 俊太に。
 俊太の脳みそに。
 近づけるかもしれない。
 帰り道。自転車置き場から、出発した。
「なー、あちいなー」
 昌磨が叫ぶ。
 なぜ。
 あれ。
 「なぜ」、夏って、こんなに暑いんだろう。
 いつもは当たり前だって、思ってたけど。
「それは地球が一年中右上から左下へ傾いてるからだよー!」
 太雅がそう叫んだ。
 地球が右上から左下へ傾いている……。
 地球は太陽の周りを回る。なのに、地球は常に、1年じゅう右上から左下……。
 そうか!
 日本は北半球にある。
 地球が太陽に、前に傾いているとき、北半球には、太陽の光が、よく当たる!
 そして、地球が太陽に、後ろに傾いているとき!
 南半球に光が当たる!
 夏は、地球が太陽に向けて、前に傾いている時期なのか! だから、夏は、こんなに暑い!
 地球の角度が変わらない。
 23.4度、同じ方向に常に傾く。
 そして、1年かけて太陽の周りを回る。
 だとしたら、太陽に対して前に傾いている時期、後ろに傾いている時期は、出てくる。
 なるほど……!
 面白い……!
 面白いじゃん、「なぜ」っていう考え方!