秋晴れのいい天気だった。
 清子と弥生と紗江の三姉妹は、墓地を歩いていた。
「揃うの久しぶりね」
 清子が言った。
「なんか忙しくって、コンビニ。アルバイトがまたやめるし」
 紗江が言った。
「ちょっと痩せた?」
 弥生が気遣うと、
「そんなことないよ、体重増えたし」
 紗江が腰を叩いた。「ダイエットしないと」
「顔色悪いよ。ねえ、ほんと大丈夫? あんた」
「……まだ内緒にしとこうと思ったんだけどな」
 紗江が恥ずかしそうに笑った。
「もう離婚? だからあれほどいったじゃない、そんな急に結婚しなくたってよかったのに……」
 清子が言った。
「違う違う」
「あんたまさか……」
「ばれたか」
 紗江が舌を出し、二人は微笑み合った。
「あんたちはいつもそう。二人してわたしをのけものにして」
 清子が不平を漏らすと、
「違うって、あのね」
 と紗江が耳打ちして言った。
「お赤飯……炊く?」
 驚いて、そして、清子が紗江を抱きしめた。
「お姉さん、なんなのそれ」
 弥生が呆れたように言った。
「だって、おめでたいじゃないの」
「荷物持つよ」
 弥生が紗江の提げていたトートバッグを取ろうとした。
「いいよ別に、そんな」
「万全な状態でいないと」
「ありがと」
 と紗江が渡すと、。
「おもっ」
 弥生はびっくりして荷物を落としそうになった。
「弥生ちゃんはひ弱ねえ」
 清子が笑った。
「これほんと重いよ。なに持ち歩いてんのこんなに」
「どれどれ」
 清子が軽々と持ち上げた。
「ええっ」
「弥生ちゃんはお箸より重いもの持ち上げたことないからねえ」
 清子がにやにやしながら言った。
「あれよきっと」
 弥生が清子と紗江を交互に指差した。
「なにさ」
 清子が訊ねると、
「母は強し」
 と弥生は言った。
「わたし母になったことなんてないけど」
 清子が顔をしかめると、
「母代わりみたいなもんだったじゃん」
「わたしはあくまで長女。『若草物語』のメグ」
 と言った。