――斎場まで一緒に来ていたのは他に、村上社長とご家族――奥さまと十四歳のお嬢さん、社長秘書となった小川先輩、篠沢商事を始めとするグループ企業の幹部たち、そして篠沢一族の面々がズラズラと。ちなみに、小川先輩は社長一家のクルマに同乗していた。
一般的な葬儀なら、これだけの大人数になるとマイクロバスを数台チャーターすれば済むのだが。この人たちは黒塗りのハイヤーやら高級車(ではないクルマもあったような……)などでズラズラと何台も連なってついてきていたので、何だか異様な光景に思えた。一族はプライドの高い人が多いので、マイクロバスに乗り合うことをよしとしなかったのだそうだが、後ろからついてこられた僕にとっては威圧感がハンパなかった。
社長たち幹部のみなさんは最後の挨拶もそこそこに引き揚げられ、小川先輩も帰ることになった。
絢乃さんたち篠沢一族のみなさんは火葬中の振舞いの席で親族会議を行うらしく、僕も絢乃さんの秘書としてそこに同席させて頂くことになっていた。
「――じゃあね、桐島くん。あとは頼んだよ」
絢乃さんたちと話した後、タクシーを手配した先輩は僕に話しかけた時涙ぐんでいた。
「先輩……、大丈夫ですか? 泣いてるみたいですけど」
「大丈夫……ではないけど、まぁ何とかね。あたしも気持ち切り替えなきゃ。――あ、そうだ。絢乃さんも何となく気づかれてたみたい」
心配して訊ねた僕に気丈に答えてくれた先輩が、真顔になってポロっと言った。
「気づかれてたって、何にですか?」
「あたしが、お父さまに想いを寄せてたこと。頭のいいお嬢さんだから、もしかしたらとは思ってたけどね」
「うん、なるほど……」
僕もそんな気はしていた。絢乃さんはカンが鋭い人だから、そうだろうなと。でも、彼女はそれと同時に相手への気遣いもすごい人なのだ。小川先輩にそのことを問い質さなかったのは、彼女の優しさからだったのだろう。
「先輩、余計なお世話かもしれないですけど。先輩はこの先、きっといい恋ができると思います。俺のよく知ってる人だと……そうだな、営業二課の前田雄斗さんとかどうですか?」
「前田くん? どうして?」
僕が名前を挙げた前田さんというのは先輩の同期入社組で、僕が見た限りでは先輩に気があるらしい。イケメンだが硬派な人でちょっと近寄りがたい雰囲気を持っているが、もちろん営業マンなので愛想が悪いわけでもない。逆にそういう無骨な感じがいいという女性もいるらしい。
一般的な葬儀なら、これだけの大人数になるとマイクロバスを数台チャーターすれば済むのだが。この人たちは黒塗りのハイヤーやら高級車(ではないクルマもあったような……)などでズラズラと何台も連なってついてきていたので、何だか異様な光景に思えた。一族はプライドの高い人が多いので、マイクロバスに乗り合うことをよしとしなかったのだそうだが、後ろからついてこられた僕にとっては威圧感がハンパなかった。
社長たち幹部のみなさんは最後の挨拶もそこそこに引き揚げられ、小川先輩も帰ることになった。
絢乃さんたち篠沢一族のみなさんは火葬中の振舞いの席で親族会議を行うらしく、僕も絢乃さんの秘書としてそこに同席させて頂くことになっていた。
「――じゃあね、桐島くん。あとは頼んだよ」
絢乃さんたちと話した後、タクシーを手配した先輩は僕に話しかけた時涙ぐんでいた。
「先輩……、大丈夫ですか? 泣いてるみたいですけど」
「大丈夫……ではないけど、まぁ何とかね。あたしも気持ち切り替えなきゃ。――あ、そうだ。絢乃さんも何となく気づかれてたみたい」
心配して訊ねた僕に気丈に答えてくれた先輩が、真顔になってポロっと言った。
「気づかれてたって、何にですか?」
「あたしが、お父さまに想いを寄せてたこと。頭のいいお嬢さんだから、もしかしたらとは思ってたけどね」
「うん、なるほど……」
僕もそんな気はしていた。絢乃さんはカンが鋭い人だから、そうだろうなと。でも、彼女はそれと同時に相手への気遣いもすごい人なのだ。小川先輩にそのことを問い質さなかったのは、彼女の優しさからだったのだろう。
「先輩、余計なお世話かもしれないですけど。先輩はこの先、きっといい恋ができると思います。俺のよく知ってる人だと……そうだな、営業二課の前田雄斗さんとかどうですか?」
「前田くん? どうして?」
僕が名前を挙げた前田さんというのは先輩の同期入社組で、僕が見た限りでは先輩に気があるらしい。イケメンだが硬派な人でちょっと近寄りがたい雰囲気を持っているが、もちろん営業マンなので愛想が悪いわけでもない。逆にそういう無骨な感じがいいという女性もいるらしい。