絢乃さんご自慢の特性ケーキはシンプルなイチゴのホールケーキで、スポンジ生地に香りづけとして少量のリキュールが練りこまれていたらしい。源一会長が、甘いものがあまりお好きではなかったからだという。そういうところからも、絢乃さんのお父さま思いなところが窺えた。
――たっぷりのごちそうがなくなった頃、プレゼント交換が行われた。
絢乃さんは里歩さんにマフラーと手袋を、お父さまにクッションを、そして僕にもネクタイを下さった。……が、赤いストライプ柄の入ったネクタイに僕は正直困ってしまった。僕の持っているスーツはほとんどがグレーの地味なものだったので、この柄はちょっと合わないんじゃないかと思ったのだ。
「えっ、そうかなぁ? 濃い色のスーツに合わせたらステキだと思うけど」
僕にはちょっと派手じゃないか、と感想を漏らすと、彼女からはそんな答えが返ってきた。
濃い色のスーツ……、持っていないから新調するしかないか。会長秘書になるんだし。でもちょっと痛い出費だな……と僕はこっそり心配していた。
里歩さんは絢乃さんにコスメを贈っていたが、僕と源一会長は何も用意していなかった。
二人してそのことを申し訳なく思い、弁解すると、「二人は参加してくれただけで十分」と絢乃さんは笑いながらおっしゃった。
「そうですか? 何だか、招待されたのに手ぶらで来たのが申し訳なくて。……あ、そうだ。絢乃さん、後ほど少しお付き合いして頂けませんか? お見せしたいものがあるので」
せめてプレゼント代わりに、絢乃さんとお約束していたとおり、新車のお披露目をしようと思い立った。そのことを彼女に耳打ちすると、「……えっ? うん、いいけど」と頬を染めながら頷き、その光景を加奈子さんと里歩さん、源一会長とお手伝いさんまでもがニヤニヤしながら眺めていた。
もしやこの人たちはみんな、僕と絢乃さんが親しくしていることをご存じなのか……!? 僕はこの時、背中に冷や汗が伝うのを感じた。
――たっぷりのごちそうがなくなった頃、プレゼント交換が行われた。
絢乃さんは里歩さんにマフラーと手袋を、お父さまにクッションを、そして僕にもネクタイを下さった。……が、赤いストライプ柄の入ったネクタイに僕は正直困ってしまった。僕の持っているスーツはほとんどがグレーの地味なものだったので、この柄はちょっと合わないんじゃないかと思ったのだ。
「えっ、そうかなぁ? 濃い色のスーツに合わせたらステキだと思うけど」
僕にはちょっと派手じゃないか、と感想を漏らすと、彼女からはそんな答えが返ってきた。
濃い色のスーツ……、持っていないから新調するしかないか。会長秘書になるんだし。でもちょっと痛い出費だな……と僕はこっそり心配していた。
里歩さんは絢乃さんにコスメを贈っていたが、僕と源一会長は何も用意していなかった。
二人してそのことを申し訳なく思い、弁解すると、「二人は参加してくれただけで十分」と絢乃さんは笑いながらおっしゃった。
「そうですか? 何だか、招待されたのに手ぶらで来たのが申し訳なくて。……あ、そうだ。絢乃さん、後ほど少しお付き合いして頂けませんか? お見せしたいものがあるので」
せめてプレゼント代わりに、絢乃さんとお約束していたとおり、新車のお披露目をしようと思い立った。そのことを彼女に耳打ちすると、「……えっ? うん、いいけど」と頬を染めながら頷き、その光景を加奈子さんと里歩さん、源一会長とお手伝いさんまでもがニヤニヤしながら眺めていた。
もしやこの人たちはみんな、僕と絢乃さんが親しくしていることをご存じなのか……!? 僕はこの時、背中に冷や汗が伝うのを感じた。