お父さまとは以前よりよくお話をされるようになったらしい。
父親と娘というのはどこの家庭でも没交渉というか、あまりいい距離感ではないと思っていたが(いわゆる「パパウザい!」的な?)。絢乃さんとお父さまの場合はそれに当てはまらなかったようだ。夕焼けに染まりながら目を細めて話される絢乃さんは、お父さまへの愛情が全身から溢れ出していて神々しいくらいだった。
「余命宣告された時はショックだったけど、今はパパと過ごす時間の一分一秒が尊く思えるの。そう思えるようになったのは貴方のおかげだよ。桐島さん、ホントにありがと」
そう語られたように、彼女はお父さまの命のリミットと真摯に向き合われているのだと分かり、僕も嬉しかったし、そんな彼女のことがより愛おしく感じた。「感謝されるようなことは何も」と謙遜で返したが、本当はベタ褒めされるのが照れ臭かっただけだ。
「――そういえば、もうすぐクリスマスですね。絢乃さんはもう予定が決まってらっしゃるんですか?」
こんな質問をしたのは、あわよくば彼女が僕と一緒にクリスマスを過ごしてくれるのではないか、という淡い期待もあったからかもしれない。デートなんておこがましいことは言えないが、せめてメッセージアプリで繋がって、同じ時間を共有するくらいならバチは当たらないだろう、と。正直、もう〝クリぼっち〟からは脱却したかったのだ。
絢乃さんは「まだ特にこれといっては」という答えの後、僕に「彼女と過ごしたりするの?」と質問返し。
こんなことを訊くということは、もしかして……!? 彼女も僕と過ごしたがっているのか!? 待て待て俺! 女性不信はどこに行った!?
「いいえ、僕もまだ何も。というか彼女はいないので、今年もきっとクリぼっちですね……」
肩をすくめ、余裕をぶっこいて答えたつもりだったが、本当は心臓バクバクだった。ちなみに脳内BGMは超ロングヒットのクリスマスイブの歌である。
彼女はホッとしたように「……そう」と言ったので、僕に交際相手がいないことに安心していたのは間違いないようだった。
絢乃さんは毎年、イブにはお友だちとお台場のツリーを見に行かれるそうだが、その年はお父さまと過ごされる最後のクリスマスだけに、お友だちも遠慮されているらしかった。そしてきっと、彼女自身も悩まれていたのだろう。
父親と娘というのはどこの家庭でも没交渉というか、あまりいい距離感ではないと思っていたが(いわゆる「パパウザい!」的な?)。絢乃さんとお父さまの場合はそれに当てはまらなかったようだ。夕焼けに染まりながら目を細めて話される絢乃さんは、お父さまへの愛情が全身から溢れ出していて神々しいくらいだった。
「余命宣告された時はショックだったけど、今はパパと過ごす時間の一分一秒が尊く思えるの。そう思えるようになったのは貴方のおかげだよ。桐島さん、ホントにありがと」
そう語られたように、彼女はお父さまの命のリミットと真摯に向き合われているのだと分かり、僕も嬉しかったし、そんな彼女のことがより愛おしく感じた。「感謝されるようなことは何も」と謙遜で返したが、本当はベタ褒めされるのが照れ臭かっただけだ。
「――そういえば、もうすぐクリスマスですね。絢乃さんはもう予定が決まってらっしゃるんですか?」
こんな質問をしたのは、あわよくば彼女が僕と一緒にクリスマスを過ごしてくれるのではないか、という淡い期待もあったからかもしれない。デートなんておこがましいことは言えないが、せめてメッセージアプリで繋がって、同じ時間を共有するくらいならバチは当たらないだろう、と。正直、もう〝クリぼっち〟からは脱却したかったのだ。
絢乃さんは「まだ特にこれといっては」という答えの後、僕に「彼女と過ごしたりするの?」と質問返し。
こんなことを訊くということは、もしかして……!? 彼女も僕と過ごしたがっているのか!? 待て待て俺! 女性不信はどこに行った!?
「いいえ、僕もまだ何も。というか彼女はいないので、今年もきっとクリぼっちですね……」
肩をすくめ、余裕をぶっこいて答えたつもりだったが、本当は心臓バクバクだった。ちなみに脳内BGMは超ロングヒットのクリスマスイブの歌である。
彼女はホッとしたように「……そう」と言ったので、僕に交際相手がいないことに安心していたのは間違いないようだった。
絢乃さんは毎年、イブにはお友だちとお台場のツリーを見に行かれるそうだが、その年はお父さまと過ごされる最後のクリスマスだけに、お友だちも遠慮されているらしかった。そしてきっと、彼女自身も悩まれていたのだろう。