――翌朝、僕はトースト一枚と自分で淹れたコーヒーで簡単に朝食を済ませ、いつもどおり出社した。

「――おっす、久保」

「おう。……桐島、なんか今日ご機嫌だな。ゆうべ何かいいことでもあったん?」

 総務課のオフィスに入ってすぐ久保に声をかけると、フリードリンクの抹茶ラテを飲んでいた彼がバケモノでも見たような口ぶりで言って首を傾げた。

「俺が機嫌いいとなんか不都合なことがあるのか、お前は」

「うん、なんか気味わるい」

「…………」

 僕もフリードリンクのマシンでブレンドコーヒー(微糖・ミルク入り)を紙コップに(そそ)ぎながら質問返しをしてやると、ヘラヘラ笑いながらヤツは答えた。

「あっ、ウソ! 冗談だって! 怒んなよぉ、桐島ぁ」

「…………あのなぁ」

 ふつふつと怒りがこみ上げ、ものすごい形相で睨むと「冗談だから怒るな」ときたもんだ。

「……それはともかく。どうなのよ、桐島? いいことあったのか?」 

「別にいいだろ、そんなの何だって。お前には関係ないし」

 僕はブスッと答えながら席に戻ってコーヒーをすすり始めたが――。次の瞬間、この男は特大の爆弾を投下しやがった。

「分かった! 会場にものすごい巨乳の可愛いコがいたんだろ!」

「……………………ブホッ!」

 僕はその後しばらく盛大にむせ、ゴホゴホやっていたが、落ち着くとツッコミを入れた。

「おまっ、なんでそこで巨乳が出てくるかなぁ? 脈絡なさすぎだろ」

「だってさぁ、巨乳は男のロマンだぜ? 日比野もそうだったじゃん」

「……お前、それ思いっきり地雷踏んじまってるからな?」

 僕は思いっきり久保を睨んだ。胸ウンヌンの話はともかく、彼女の名前を僕の前で出すのは自爆するのに等しい行為だとこの男は分かっていないのだろうか?
 絢乃さんは巨乳というほどではないが、まぁまぁグラマーな方ではあった。高校生だったにしては発育がいい方ではなかったかと思う。……が。

「だいたい、胸の大きさなんかいちいち気にしてないって、……あ」

 僕はうっかり口が滑ってしまい、「やべぇ」と口元を手で押さえた。が、「遅かりし由良之助(ゆらのすけ)」。久保にはバッチリ聞かれた後だった。

「〝あ〟? 〝あ〟って何だよ? まさかマジで女の子絡みか?」

 ここまでバレてしまっては僕も引っ込みがつかないので、仕方なく久保に絢乃さんとの出来事を白状した。源一会長が倒れられたことは、話そうかどうか迷った。僕から聞き出さなくても、そのうち会社の誰かが話すだろうと思ったのだ。

「…………実はさ、昨夜、絢乃さんと知り合って。帰りは俺がクルマで家まで送っていったんだ。連絡先も交換してもらって」

「へぇー、マジ? つうか『絢乃さん』ってまさか、会長のお嬢さま?」

「そのまさかだよ。んで、絢乃さんの方から『連絡先交換したい』って言われて」