卒業式には僕も参列させて頂いた。普段のスーツに白い礼服用のネクタイを締め、愛車で学校へ向かうと来客用の駐車場にクルマを停めさせてもらった。ビシッとパンツスーツで決め、胸に白いコサージュを着けた加奈子さんともそこで合流した。
「――絢乃、卒業おめでとう。パパが亡くなってから今日までよく頑張ってきたわね」
「絢乃さん、ご卒業おめでとうございます」
「ママ、ありがとう! 貢も来てくれたんだね。ありがと」
お母さまと一緒に僕もいたことに、絢乃さんは大変喜ばれていた。僕は彼女の最後の制服姿をこの目に焼き付けておこうと思い、じーっと凝視していたのだが。
「……ん? どうしたの、貢。わたしのことじっと見つめちゃって」
「ああ、いえ。これで絢乃さんの制服姿も見納めかと思うと」
「そうだよね……。これからはただのコスプレになっちゃうもんね。よかったら写真撮る?」
彼女のご厚意に甘えてスマホで撮影させて頂き、2ショットでの自撮りにも応じて頂いた。
彼女は卒業後、大学へは進学せず篠沢グループの経営だけに専念されている。やっぱり彼女は経営者になるべく生まれてきた人なんだなと思う。
ちなみに里歩さんは体育教師を目指すべく大学へ進まれ、唯さんはアニメーターを目指して専門学校に通われている。絢乃さん曰く、三人の友情はこれからもずっと続いていくのだそうだ。
四月には両家顔合わせを兼ねた食事会が篠沢邸で開かれ、僕の両親と兄が初めて絢乃さんのお宅を訪れた。そして、兄と一緒に訪れたもう一人の女性は栞さんといって、なんと兄と授かり婚をした奥さんだ。絢乃さんも「いつの間に……」と驚かれていた。
テーブルに並んだ数々の料理は絢乃さんと加奈子さん、家政婦さんとコックさんの四人で作られたそうで、どれも美味しくて両親と兄夫婦もたいそう満足していた。
デザートとして出されていったイチゴのシフォンケーキはスイーツ作りが得意な絢乃さんのお手製で、母が「絢乃さんってお菓子も作れるのね」とえらく感服していた。私も教えてもらおうかしら、なんて後から言っていた。やっぱりこの二人はいい嫁姑になれそうだ。
* * * *
――その後間もなく僕はアパートを引き払って篠沢家に同居することになり、迎えた今日、六月吉日。朝からよく晴れた今日は、絢乃さんと僕の結婚式当日である。
僕たちが式を挙げるこの結婚式場は新宿区内にあり、ここは篠沢グループの持ち物だ。
「――絢乃、卒業おめでとう。パパが亡くなってから今日までよく頑張ってきたわね」
「絢乃さん、ご卒業おめでとうございます」
「ママ、ありがとう! 貢も来てくれたんだね。ありがと」
お母さまと一緒に僕もいたことに、絢乃さんは大変喜ばれていた。僕は彼女の最後の制服姿をこの目に焼き付けておこうと思い、じーっと凝視していたのだが。
「……ん? どうしたの、貢。わたしのことじっと見つめちゃって」
「ああ、いえ。これで絢乃さんの制服姿も見納めかと思うと」
「そうだよね……。これからはただのコスプレになっちゃうもんね。よかったら写真撮る?」
彼女のご厚意に甘えてスマホで撮影させて頂き、2ショットでの自撮りにも応じて頂いた。
彼女は卒業後、大学へは進学せず篠沢グループの経営だけに専念されている。やっぱり彼女は経営者になるべく生まれてきた人なんだなと思う。
ちなみに里歩さんは体育教師を目指すべく大学へ進まれ、唯さんはアニメーターを目指して専門学校に通われている。絢乃さん曰く、三人の友情はこれからもずっと続いていくのだそうだ。
四月には両家顔合わせを兼ねた食事会が篠沢邸で開かれ、僕の両親と兄が初めて絢乃さんのお宅を訪れた。そして、兄と一緒に訪れたもう一人の女性は栞さんといって、なんと兄と授かり婚をした奥さんだ。絢乃さんも「いつの間に……」と驚かれていた。
テーブルに並んだ数々の料理は絢乃さんと加奈子さん、家政婦さんとコックさんの四人で作られたそうで、どれも美味しくて両親と兄夫婦もたいそう満足していた。
デザートとして出されていったイチゴのシフォンケーキはスイーツ作りが得意な絢乃さんのお手製で、母が「絢乃さんってお菓子も作れるのね」とえらく感服していた。私も教えてもらおうかしら、なんて後から言っていた。やっぱりこの二人はいい嫁姑になれそうだ。
* * * *
――その後間もなく僕はアパートを引き払って篠沢家に同居することになり、迎えた今日、六月吉日。朝からよく晴れた今日は、絢乃さんと僕の結婚式当日である。
僕たちが式を挙げるこの結婚式場は新宿区内にあり、ここは篠沢グループの持ち物だ。