それだけあんたのことを愛してるからだろ、と内田さんは続けた。
確かに、彼女が篠沢グループのトップに立ってからずっと、僕は彼女に守られてばかりだった。最初は社員の一人として守られているだけだと思っていたが、それは違った。彼女は最初から、僕のことを愛しているから守って下さっていたのだ。
「もうちょっと自分の彼女のこと信用してあげなよ、桐島さん」
「信用はしてますよ、ずっと」
「まぁオレも、偉そうなことは言えねぇんだけどな。――オレは、ここにいる真弥に救われたんだ」
内田さんが思わぬカミングアウトをしたので、僕は彼の過去――この事務所を開く前のことが気になった。
「あの……、ホームページで拝見したんですけど。内田さんって前は警視庁の刑事さんだったんですよね? どうして退職されたんですか?」
「警察組織に嫌気がさしたから、だよね」
まず最初に口を開いたのは真弥さんで、内田さんも「ああ」と頷いた。彼女も事情をよく知っているらしい。
「真弥とはある事件をとおして知り合ったんだけどさ。彼女、実はスゴ腕のハッカーで、捜査に協力してもらってたんだ。それで犯人は逮捕できただけど、彼女に協力してもらったことで監察官に目をつけられてさ。真弥は警察組織のお偉いさんがある事件を揉み消してたことを突き止めてた。そのことをうやむやにしたかったらしい上にクビにされかけて、逆にオレの方から辞表を叩きつけてやったんだ。こんな腐った組織なんかクソだ、ってな」
「んで、警察を辞めたこの人にあたしから言ったの。『二人で調査事務所やろうよ』って」
「そうだったんですか……」
「だからオレは、そこに彼女――真弥と出会えた意味があるんじゃないかと思ってる。桐島さん、あんただってそうじゃないのか?」
「僕が、彼女に出会えたことの意味……か」
絢乃さんに出会えたことで、僕は会社を辞めなくて済んだ。彼女の秘書になったことで、自分の仕事を好きになれたし誇りも持てるようになった。バリスタになるという夢にも一歩近づけた。
そして、彼女を好きになったことで女性不信も克服できた。あんなに消極的だった結婚も前向きに考えられるようになった。
それはすべて、絢乃さんに出会えたからだ。これこそ、僕が彼女に出会えたことの意味に他ならなかった。
確かに、彼女が篠沢グループのトップに立ってからずっと、僕は彼女に守られてばかりだった。最初は社員の一人として守られているだけだと思っていたが、それは違った。彼女は最初から、僕のことを愛しているから守って下さっていたのだ。
「もうちょっと自分の彼女のこと信用してあげなよ、桐島さん」
「信用はしてますよ、ずっと」
「まぁオレも、偉そうなことは言えねぇんだけどな。――オレは、ここにいる真弥に救われたんだ」
内田さんが思わぬカミングアウトをしたので、僕は彼の過去――この事務所を開く前のことが気になった。
「あの……、ホームページで拝見したんですけど。内田さんって前は警視庁の刑事さんだったんですよね? どうして退職されたんですか?」
「警察組織に嫌気がさしたから、だよね」
まず最初に口を開いたのは真弥さんで、内田さんも「ああ」と頷いた。彼女も事情をよく知っているらしい。
「真弥とはある事件をとおして知り合ったんだけどさ。彼女、実はスゴ腕のハッカーで、捜査に協力してもらってたんだ。それで犯人は逮捕できただけど、彼女に協力してもらったことで監察官に目をつけられてさ。真弥は警察組織のお偉いさんがある事件を揉み消してたことを突き止めてた。そのことをうやむやにしたかったらしい上にクビにされかけて、逆にオレの方から辞表を叩きつけてやったんだ。こんな腐った組織なんかクソだ、ってな」
「んで、警察を辞めたこの人にあたしから言ったの。『二人で調査事務所やろうよ』って」
「そうだったんですか……」
「だからオレは、そこに彼女――真弥と出会えた意味があるんじゃないかと思ってる。桐島さん、あんただってそうじゃないのか?」
「僕が、彼女に出会えたことの意味……か」
絢乃さんに出会えたことで、僕は会社を辞めなくて済んだ。彼女の秘書になったことで、自分の仕事を好きになれたし誇りも持てるようになった。バリスタになるという夢にも一歩近づけた。
そして、彼女を好きになったことで女性不信も克服できた。あんなに消極的だった結婚も前向きに考えられるようになった。
それはすべて、絢乃さんに出会えたからだ。これこそ、僕が彼女に出会えたことの意味に他ならなかった。