たとえば、僕の部屋で二人横並びになってカップアイスを食べていた時。ベッドに腰掛け、わりと密着していたあのシチュエーション。彼女の髪から香ってくるシャンプーの匂いや、手を伸ばして触れたくなるような、ツルツルスベスベの白い肌。時々見せてくれるアンニュイな表情……。それだけで、僕の理性はあっという間に吹っ飛びそうになった。
 そして、首元には僕がお誕生日に贈ったあのネックレス。――彼女は本当に、あれから肌身離さず身に着けて下さっているそうだ。もちろん、制服姿の時にも。それだけでも十分、彼女の僕への愛を感じられた。

 それでもって、彼女にも僕との体の繋がりを求める気持ちがあったという告白だ。十八歳といえばもう法律上は立派な大人の女性で(飲酒や喫煙の話はまた別の問題だが)、お互いの意思が一致しているならあの場で関係を持っていても問題はなかったはずである。そこは〝出張〟という名目と、彼女がまだ高校生だったということを気にしすぎていた僕がカタブツすぎたせいだろう。
 彼女もあの後、ご自身の部屋で僕への熱をどう処理していいか分からずに悶々としていらっしゃったのだろうか? もしかしたらベッドの中で、一人で……? あの細い指で、あんなところやこんなところを(いじ)っては(つや)っぽい声を発していたり……するのか?
 あの絢乃さんが、人知れず一人で乱れている光景か……。何だか想像がつかない。

「……お前さ、今とんでもねぇ想像してなかったか? なんか顔赤いぞ?」

 兄の存在をしばし忘れ、一人でムフフ♡ なアレやコレやを想像していたら、兄にバッチリ見抜かれていた。 ただしこれは、明らかに僕にTL小説を勧めていた小川先輩のせいである。
 実はあの後しばらくしてから、別の書店で思いっきり濃密なTL小説を数冊購入して、すっかりハマってしまったのだ。そのヒロインたちはしばしば、自分の熱――欲望を自分の手でかき乱していた。だから絢乃さんも……とついつい妄想を膨らませてしまったのだ。

「…………別に、何でもない」

「いや、オレは別に呆れてるとかそんなんじゃねぇのよ。やっぱお前もオトコだったんだなーって」

「そうだよ」

 絢乃さんと交わりたい、それが僕の本能に基づいた願望だった。彼女は僕の愛すべきボスで、女王さまだ。だから――、本当は、早く彼女の欲望を満たしてあげたかった。
 でも彼女には僕が初めての相手だから、そうなった時には僕の方がちゃんとリードして差し上げなくては。