「――会長、桐島は不器用だけどいいヤツですよ」
「え? うん……、知ってますけど」
「総務ではお人よしすぎて、上司からいいように使われてましたけど。真面目だし、仕事は丁寧だし、思い遣りもあるし。会長の秘書としても、絶対に頼りになると思います。……ですから桐島のこと、よろしくお願いします」
同期を思う久保さんの熱い言葉に、わたしも胸を打たれた。彼は友人として、新たな道を歩み始めた貢の背中を押そうとしてくれているんだと思った。
「はい。彼のことはわたしにドンと任せて下さい! じゃあ失礼します。桐島さん、行こう」
「ええ。――じゃあ久保、またな」
わたしも久保さんにペコリと頭を下げて、貢と一緒にエレベーターホールへ向かった。
「――それにしても、久保さんって同期の人の代理だったんだね。それも個人的に頼まれたって」
「ええ、僕も意外でした。課長の手柄じゃなかったなんて。でも後から揉めませんかね? 広報部と総務課」
「うん……。これはもう、部署ごとに仕事を割り振るシステムを変えていかなきゃいけないかなぁ」
会長として早くも見つかった問題点。この、一人一人が自分に適性のある仕事を任せてもらえないという部署ごとの縦割りシステムは、色々なところで綻びが出ていただろうし、社員もきっと働きにくさを抱えていただろう。
「桐島さんだって、入社前にはこの会社でやってみたいと思った仕事があったでしょ? 総務課に配属されたのは貴方の意志じゃないはずだよね」
わたしには、彼が最初から総務の仕事をバリバリやりたがっていたとは思えなかった。総務課は縁の下の力持ち、といえば聞こえはいいかもしれないけれど、その仕事内容はほとんど雑用だ。イベントの進行など、時々やり甲斐を感じられる大きな仕事もあるにはあるのだけど。
「はい。入社前には、この会社で大好きなコーヒーに関われる仕事をやってみたいと思ってたんです。マーケティング部とか海外事業部とか、そういう部署に配属されたらいいな、って。ですが、いざ入社してみたら配属先は総務課で正直ガッカリしました。でも一度決められた配属先に異議申し立てはできないじゃないですか。だから、与えられた仕事をこなしていくしかなかったんです」
「え? うん……、知ってますけど」
「総務ではお人よしすぎて、上司からいいように使われてましたけど。真面目だし、仕事は丁寧だし、思い遣りもあるし。会長の秘書としても、絶対に頼りになると思います。……ですから桐島のこと、よろしくお願いします」
同期を思う久保さんの熱い言葉に、わたしも胸を打たれた。彼は友人として、新たな道を歩み始めた貢の背中を押そうとしてくれているんだと思った。
「はい。彼のことはわたしにドンと任せて下さい! じゃあ失礼します。桐島さん、行こう」
「ええ。――じゃあ久保、またな」
わたしも久保さんにペコリと頭を下げて、貢と一緒にエレベーターホールへ向かった。
「――それにしても、久保さんって同期の人の代理だったんだね。それも個人的に頼まれたって」
「ええ、僕も意外でした。課長の手柄じゃなかったなんて。でも後から揉めませんかね? 広報部と総務課」
「うん……。これはもう、部署ごとに仕事を割り振るシステムを変えていかなきゃいけないかなぁ」
会長として早くも見つかった問題点。この、一人一人が自分に適性のある仕事を任せてもらえないという部署ごとの縦割りシステムは、色々なところで綻びが出ていただろうし、社員もきっと働きにくさを抱えていただろう。
「桐島さんだって、入社前にはこの会社でやってみたいと思った仕事があったでしょ? 総務課に配属されたのは貴方の意志じゃないはずだよね」
わたしには、彼が最初から総務の仕事をバリバリやりたがっていたとは思えなかった。総務課は縁の下の力持ち、といえば聞こえはいいかもしれないけれど、その仕事内容はほとんど雑用だ。イベントの進行など、時々やり甲斐を感じられる大きな仕事もあるにはあるのだけど。
「はい。入社前には、この会社で大好きなコーヒーに関われる仕事をやってみたいと思ってたんです。マーケティング部とか海外事業部とか、そういう部署に配属されたらいいな、って。ですが、いざ入社してみたら配属先は総務課で正直ガッカリしました。でも一度決められた配属先に異議申し立てはできないじゃないですか。だから、与えられた仕事をこなしていくしかなかったんです」