森の中央部へ向かってマッシュとグランドが走る。グランドは必死にマッシュのスピードに追いついていった。マッシュが走りながら、グランドに叫ぶ。
「帰ってパールの側にいろ! 父親が側にいた方がパールも安心なはずだ! 早く引き返せ!」
マッシュは森を走りながらグランドを説得する。
マッシュはもちろんパールを救うつもりでいた。絶対に間に合う自信があった。しかし、万が一のことを考えた時、父親は絶対にパールの側にいた方が良い――そう考えていた。
グランドが、まっすぐマッシュの背中だけを見て言った。
「私はおまえたちに気づかされた! ブルネラの民としての誇りにこだわり過ぎて、子どもを愛する親としての資格を失うところだった! だからせめて! せめて、子を愛する父親として、あの娘を救うために最後まで諦めず、全力であの娘の死を退けるための努力をしたいんだ!」
マッシュは何も言わなかった。
ただグランドがそう言い終わった時、マッシュの走りに、より一層の力強さが増した。
マッシュの背中が、『ならば! 最後まで私について来い!』と言っているようだった。
陽橙樹の木に到着するとすぐマッシュは地面を掘り始めた。
「木の根の部分に青の芽と呼ばれるものがあるはずだ!それをすり潰して搾った液体が特効薬になるんだ!」
マッシュがグランドに説明しながら地面を掘り、青の芽を探す。
「わかった!」
グランドも顔中土まみれになって地面を掘った。
マッシュも必死になって掘り進めて探す。
「どこだ! どこだ!」
陽橙樹と地表を覆うように蔦が這っている。
割れた枝や石、剥けた根の皮が、必死に探す二人の皮膚に食い込んでいく。埋もれ根の先を追い求めるように二人は掘った。土色の根と土があるだけだ。次の根へと焦る気持ちが迫る。引きずり出された小さな根が辺りに土をまき散らす。
グランドが叫んだ。
「あった! これか!?」
マッシュがグランドに駆け寄り確認する。根の先に、青い塊のようなものが寄生するように繋がっている。青の芽と呼ばれるそれは大人の親指ほどの大きさで、絵の具の青のような鮮やかな色をしていた。
「それだ! それを根から切り離し、すり潰して搾った液体を飲ませるんだ!」
土まみれの二人は青の芽を根から引きちぎるように切り離すと、直ぐさま全速力で森を駆け抜けて町へ向かった。
間に合う! 絶対に間に合う!
二人は心の中で呪文のように唱えていた。
町の外でクルックスが空を仰いで目を輝かせて言った。
「あっ!? アマルさん、フランクさん、ほら見て! 大きな虹が青空にぽっかり架かってますよ!」
皆が、青空を見上げる。
「ああ、本当だ……。綺麗だなぁ。あたしもいつか、あんな虹みたいに、見るだけで感動を与えられるお菓子を作ってみたいなぁ……」
「アマルさんなら絶対に作れるよ! ぼくたちなんでも協力するよ!」
「是非お手伝いさせてください!」
エルセトラに架かる虹はその日、ブルネラの町に住むすべての人の心を優しい気持ちで満たした。
誰もがその虹を見つめて、それぞれの思いを馳せた。
エルセトラに架かる虹は、誰の目にも暖かく、そして誰の目にも優しかった。
「帰ってパールの側にいろ! 父親が側にいた方がパールも安心なはずだ! 早く引き返せ!」
マッシュは森を走りながらグランドを説得する。
マッシュはもちろんパールを救うつもりでいた。絶対に間に合う自信があった。しかし、万が一のことを考えた時、父親は絶対にパールの側にいた方が良い――そう考えていた。
グランドが、まっすぐマッシュの背中だけを見て言った。
「私はおまえたちに気づかされた! ブルネラの民としての誇りにこだわり過ぎて、子どもを愛する親としての資格を失うところだった! だからせめて! せめて、子を愛する父親として、あの娘を救うために最後まで諦めず、全力であの娘の死を退けるための努力をしたいんだ!」
マッシュは何も言わなかった。
ただグランドがそう言い終わった時、マッシュの走りに、より一層の力強さが増した。
マッシュの背中が、『ならば! 最後まで私について来い!』と言っているようだった。
陽橙樹の木に到着するとすぐマッシュは地面を掘り始めた。
「木の根の部分に青の芽と呼ばれるものがあるはずだ!それをすり潰して搾った液体が特効薬になるんだ!」
マッシュがグランドに説明しながら地面を掘り、青の芽を探す。
「わかった!」
グランドも顔中土まみれになって地面を掘った。
マッシュも必死になって掘り進めて探す。
「どこだ! どこだ!」
陽橙樹と地表を覆うように蔦が這っている。
割れた枝や石、剥けた根の皮が、必死に探す二人の皮膚に食い込んでいく。埋もれ根の先を追い求めるように二人は掘った。土色の根と土があるだけだ。次の根へと焦る気持ちが迫る。引きずり出された小さな根が辺りに土をまき散らす。
グランドが叫んだ。
「あった! これか!?」
マッシュがグランドに駆け寄り確認する。根の先に、青い塊のようなものが寄生するように繋がっている。青の芽と呼ばれるそれは大人の親指ほどの大きさで、絵の具の青のような鮮やかな色をしていた。
「それだ! それを根から切り離し、すり潰して搾った液体を飲ませるんだ!」
土まみれの二人は青の芽を根から引きちぎるように切り離すと、直ぐさま全速力で森を駆け抜けて町へ向かった。
間に合う! 絶対に間に合う!
二人は心の中で呪文のように唱えていた。
町の外でクルックスが空を仰いで目を輝かせて言った。
「あっ!? アマルさん、フランクさん、ほら見て! 大きな虹が青空にぽっかり架かってますよ!」
皆が、青空を見上げる。
「ああ、本当だ……。綺麗だなぁ。あたしもいつか、あんな虹みたいに、見るだけで感動を与えられるお菓子を作ってみたいなぁ……」
「アマルさんなら絶対に作れるよ! ぼくたちなんでも協力するよ!」
「是非お手伝いさせてください!」
エルセトラに架かる虹はその日、ブルネラの町に住むすべての人の心を優しい気持ちで満たした。
誰もがその虹を見つめて、それぞれの思いを馳せた。
エルセトラに架かる虹は、誰の目にも暖かく、そして誰の目にも優しかった。