夕食をご馳走になった後、ノランが食後にお茶を淹れてくれた。
真珠がこの町に来た経緯を説明する。ポカの実を拾うために入った森で男たちに追いかけられ、逃げている途中でマッシュとはぐれてしまったこと。森の外でフランクが待っていることなどをノランに話した。
ノランが真珠たちの不安にひとつひとつ丁寧に答える。
「まず、フランク君のことだが、私が明日町の外に出掛けていって、直接フランク君にことの成り行きを説明してこよう。君たちが揃って無事に町から出られるようになるまでは、その場で待機してもらうように伝えておくよ」
さらにノランは続ける。
「そしてマッシュ君のことだが……最悪捕まっているなら、既に町中にその話が広まっているはずだ。まだ、町が騒いでないとなると、おそらくはまだ無事だと思う。それに、捕まったなら行く先は間違いなく町長の家だからね。実は私と町長は古くからの友人でね。久しぶりにこの町に戻って来たのも彼女に頼まれて時計の修理に来たからなんだよ」
「町長さん?」
「ああ、ドナテラと言ってね。とても優しい女性だよ。彼女の屋敷へも行くから町の様子を伺ってこよう。だから二人とも、今日は安心してゆっくり休みなさい」
その夜、ノランは三階に二人が眠るための柔らかい毛布と場所を用意してくれた。
二人は暖かい毛布に包まれて、巻き込まれた出来事への不安をしばし忘れてその夜は穏やかに眠りについた。
夜中に物音がして、真珠は目を覚ました。まどろみながら耳を澄ます。何やら金属を叩く音が聞こえてくる。アマルさんがきっとまだ仕事をしているのね、真珠はそう思いながら再び眠りに落ちた。
翌朝早く、真珠とクルックスは甘いシナモンの香りで目を覚ました。
「ああ、なんという香ばしい香り! わたくし言葉になりません!」
「おいしそうな匂い! なにかしら!」
二人がわくわくとしながら二階に降りていくと、ノランが着替えながらお茶を飲んでいた。出掛ける準備をしているようだ。
「おはようございます、ノランさん!」
「おはよう二人とも、随分早起きだね」
「わたくしこの香ばしい香りで思わず時刻を忘れ目覚めてしまいました♪」
ノランは上着を着終わると、棚に寄りまだ湯気の上がるパンケーキを取り出した。
「アマルが君たちに用意した朝食のパンケーキだ」
ノランが食卓の上にシナモンの香りがする温かいパンケーキとメープルシロップを並べる。
「このシロップも……アマルが自分で作っているんだ。砂糖楓のシロップは材料を集めるのがとても大変なのでアマルは町の男たちをこき使っているようだがね。あいつにはいろいろとこだわりがあるらしい。誰に似たのか」
不満気な言葉を漏らしながらも、ノランはとても嬉しそうだ。
真珠とクルックスが目を輝かせて席に座り、夢中でパンケーキを頬張り始める。ノランは二人を微笑んで見つめてから、視線を小さいシロップの瓶に移して眩しそうに目を細めた。
「では行ってくるよ。そうそう、アマルから伝えたいことがあるようだ。食べ終わったら声をかけてやってくれ」
「アマルさんがわたしたちに?」
真珠は緊張して、少しだけ不安になった。――何を言われるんだろう……。
「必ず声をかけてやっておくれよ」
にっこり笑ってから、ノランは朝の散歩に出掛けてくると言って下に降りていった。真珠は不安げにクルックスを見た。
「アマルさんはわたしたちにいったいどんな用があるのかしら?」
クルックスは見当もつかないといった顔をするだけだった。
真珠がこの町に来た経緯を説明する。ポカの実を拾うために入った森で男たちに追いかけられ、逃げている途中でマッシュとはぐれてしまったこと。森の外でフランクが待っていることなどをノランに話した。
ノランが真珠たちの不安にひとつひとつ丁寧に答える。
「まず、フランク君のことだが、私が明日町の外に出掛けていって、直接フランク君にことの成り行きを説明してこよう。君たちが揃って無事に町から出られるようになるまでは、その場で待機してもらうように伝えておくよ」
さらにノランは続ける。
「そしてマッシュ君のことだが……最悪捕まっているなら、既に町中にその話が広まっているはずだ。まだ、町が騒いでないとなると、おそらくはまだ無事だと思う。それに、捕まったなら行く先は間違いなく町長の家だからね。実は私と町長は古くからの友人でね。久しぶりにこの町に戻って来たのも彼女に頼まれて時計の修理に来たからなんだよ」
「町長さん?」
「ああ、ドナテラと言ってね。とても優しい女性だよ。彼女の屋敷へも行くから町の様子を伺ってこよう。だから二人とも、今日は安心してゆっくり休みなさい」
その夜、ノランは三階に二人が眠るための柔らかい毛布と場所を用意してくれた。
二人は暖かい毛布に包まれて、巻き込まれた出来事への不安をしばし忘れてその夜は穏やかに眠りについた。
夜中に物音がして、真珠は目を覚ました。まどろみながら耳を澄ます。何やら金属を叩く音が聞こえてくる。アマルさんがきっとまだ仕事をしているのね、真珠はそう思いながら再び眠りに落ちた。
翌朝早く、真珠とクルックスは甘いシナモンの香りで目を覚ました。
「ああ、なんという香ばしい香り! わたくし言葉になりません!」
「おいしそうな匂い! なにかしら!」
二人がわくわくとしながら二階に降りていくと、ノランが着替えながらお茶を飲んでいた。出掛ける準備をしているようだ。
「おはようございます、ノランさん!」
「おはよう二人とも、随分早起きだね」
「わたくしこの香ばしい香りで思わず時刻を忘れ目覚めてしまいました♪」
ノランは上着を着終わると、棚に寄りまだ湯気の上がるパンケーキを取り出した。
「アマルが君たちに用意した朝食のパンケーキだ」
ノランが食卓の上にシナモンの香りがする温かいパンケーキとメープルシロップを並べる。
「このシロップも……アマルが自分で作っているんだ。砂糖楓のシロップは材料を集めるのがとても大変なのでアマルは町の男たちをこき使っているようだがね。あいつにはいろいろとこだわりがあるらしい。誰に似たのか」
不満気な言葉を漏らしながらも、ノランはとても嬉しそうだ。
真珠とクルックスが目を輝かせて席に座り、夢中でパンケーキを頬張り始める。ノランは二人を微笑んで見つめてから、視線を小さいシロップの瓶に移して眩しそうに目を細めた。
「では行ってくるよ。そうそう、アマルから伝えたいことがあるようだ。食べ終わったら声をかけてやってくれ」
「アマルさんがわたしたちに?」
真珠は緊張して、少しだけ不安になった。――何を言われるんだろう……。
「必ず声をかけてやっておくれよ」
にっこり笑ってから、ノランは朝の散歩に出掛けてくると言って下に降りていった。真珠は不安げにクルックスを見た。
「アマルさんはわたしたちにいったいどんな用があるのかしら?」
クルックスは見当もつかないといった顔をするだけだった。