森を歩いていると、至るところから水の流れる音が聞こえてくる。陽の光に照らし出された木々の緑と、地面に生える高級な絨毯のようなシダ植物がとても心地好い。

 美しい鳥の囀り。まるで時間を忘れそうになる。真珠が森の癒しにうっとりしているとマッシュが言った。

「そうだ二人とも、最初に言っておくが、ポカの実を拾ってもここでは絶対に食べてはいけないよ」
「どうして?」
「わたくし聞いたことがあります。寒くもないのにポカの実を食べると高熱に侵されると」
「そうだ。何でもない場所でうっかり口にしてしまうと、大人でも一週間以上は高熱に侵され、時には命を落とすこともある。ましてや真珠、君のような子どもが食べてしまえば二日と持たないだろう」

 真珠は急に怖くなる。

「お腹空いてもポカの実だけは食べるの止めておこう」

 マッシュの後ろを歩きながら真珠は不思議に思う。

「でもどうして寒い土地でもないのにそんな木があって、体がポカポカするような効果のある実が成るのかしら。最初から寒いところにあればいいのに」
「ポカの実が必要なのは我々のような者だけではないということさ」
「……極度の寒がり屋さん? でしょうか?」
「エルカナと呼ばれる火の鳥さ!」
「火の鳥!?」
「わたくしも初耳でございます!」
「まぁ、私も見たことなどない! 本当にいるかどうかもわからないがね!」
 マッシュが喉を膨らまし大笑いした。