女王がくれた実は、クルミのような軽い隆起がありゴツゴツとしていたが、頂部にうっすらとした裂け目があり、そこに棒を差し込むと堅い殻は綺麗に割れた。

 その果汁の多さに驚く。パンパンに膨らんだスポンジのように、果汁が果肉の表面から今にも溢れてこぼれそうだ。果肉よりも果汁の方が遥かに多い。陽の光に照らされた果汁はキラキラと七色に輝いていた。

 真珠がその果汁を啜る。頬がとろけそうなほどに美味しい。そして素晴らしく甘い。今まで食べたどんなものよりも、素敵で特別な味がした。

「うわぁ……」

 真珠は感激して言葉が出ない。フランクが真珠の様子を見て、興味深げに、果実のまま丸ごと口の中に放り込んだ。口の中で溢れる果汁の味わいに放心する。言葉にならないフランクの波動が一行の心に響いてくる。海の中にいるみたいだ。

 マッシュも殻を割った果実をそのまま舌に巻きつけて、一瞬でペロリとする。予想を遥かに上回っていたのか、いつも言葉巧みに色々とレポートするマッシュが完全に言葉を失っている。

「……」

 しばしボーッとした後、ポケットのハンカチーフを取り出して上品に口の周りを拭いたが、フランクと同じように放心状態だ。よほど美味しかったのだろう。

 ただ一人残されたクルックスが「真珠さん真珠さん」と真珠の袖を引っ張る。惚けていた真珠が、果実をひとつ割って葦のストローを挿し、クルックスに手渡した。

 クルックスはそれを真珠から受け取ると、その場に座り込み両羽でその果実を持ち、果汁を吸った。

「こ……これはッ! なんと気品に満ち溢れ、大胆の中にもまろやかさと奇抜さが溶け合った味わい! このような美味なるものを、わたくしいまだかつて味わったことなどございません! ファンタスティック! まさにファンタスティックでございます!」

 クルックスが変な責任感を発揮して、マッシュの代わりにレポートした。

 笑い声は起こらない。皆ただその味に酔いしれていた。

 誰も聞いていないのを知ると、クルックスも気を取り直してもう一度しっかりと七色の果実を味わった。

「ポォォォ~~~……」

 皆空を仰いで、口をポカンと開けていた。