フラシアスの灯台から一日が過ぎ、太陽が真上から陽の光を注いだ。
そろそろかしら? 真珠はお昼を心待ちにしている。視界いっぱいに広がる青空を楽しみながらハンモックで体を揺らしていると、お待たせしました!とばかりにクルックスが正午を伝えた。
「よし、皆ランチタイムだ!」
フランクがゆっくり降下を始める。軒並ぶ小高い丘の中から一番眺めの良さそうな丘を選んで着陸する。小粋な水色の花々が咲いていた。
今日のランチ当番はクルックスだ。食事当番はフランク以外の三人で回していた。フランクの作る料理はいつも大雑把すぎたし、体が大き過ぎて小回りが利かない。元々白クジラの主食は雲だ。フランクが雑食になったのはマッシュのせいらしい。
マッシュたちが地上でテーブルを設置したり、お茶を淹れたりと食事の準備をしている間、いつもフランクは自由に空に戻って雲を集めた。一番美味しそうな部分を好きなだけちぎって、空では食べずに必ず地上で皆と食べた。
今日のクルックスのメニューはサンドイッチだ。真珠に頼んで食料庫から野菜やジャムを取り出してきていた。鼻歌まじりにクルックスがサンドイッチを仕上げている。ティーカップが用意され、サンドイッチが大皿に乗せられる。
フランクが今から食べる雲を両手いっぱいに抱えて降りて来るのを見て、マッシュが合図をする。
「今日も皆で美味しい食事を食べられることに感謝しよう!」
マッシュがそう言い終わると、南の空から声が聞こえた。
「旦那ー! マッシュの旦那ー!」
一羽の鳥がこちらへ近づいてくる。どうやらカモメらしい。
頭には笠のような変わった帽子を被っている。帽子の正面には青いツバメのマークが印刷されており、体の大きさほどある大きな鞄を肩から斜めに掛けていた。鞄にも同じツバメのマークがついている。
「ありゃ? 前に来た時より大所帯になってんなー」
そう言いながらカモメが地面に舞い降りた。大きな鞄は引きずるよりも早く、両羽で上手く抱え込む。
「おっす! フランク、また一段とでかくなったか?」
カモメはフランクの正面に立ち、エヘヘと照れる白クジラを極上のスマイルで見上げた。
「やあスパイキー。私に用事かい?」マッシュが挨拶する。
「おっと! そうだった、旦那にお届け物ですぜ」
「お疲れさま」
小さな荷物を受け取るとマッシュはスパイキーを食事に誘った。
「たまには一緒にランチでもどうだい?」
「いえ、あっしはまだ、この先に一軒運ぶブツがあるんで、お気持ちだけいただきやす!これは取扱い注意な代物なんでさ」
「そうか、それは残念だ。ではまたの機会に」
「へい! 腕がなりまっさ! ではあっしはこれで失礼しやす!」
「お疲れさまー! 気をつけてね!」
飛んでいくスパイキーの後ろ姿に向かってフランクが声をかけた。返事をするように一回転を繰り出してスパイキーは遠く離れていった。
「ねぇフランク。今のは?」
「郵便配達員のスパイキーだよ。ふふ。でも本人は『運び屋』だってすごい言い張るんだけどね!『あっしに運べないブツはない』っていうのが自慢みたいだよ!」
「こんなところまでどなたが贈り物を?」
クルックスがマッシュの荷物に興味を示す。
「ハハ! 贈り物ではない。これはギャレット社に注文しておいたジェリービーンズさ。私はビーンズの買い置きはしない主義でね」
「ポォ! さすがマッシュさん。こだわりの数だけ、紳士としての品格が高いのですね」
マッシュは「紳士」「品格」という言葉に反応した。目を一瞬だけ力強く開くと、うっすらとにやけて、得意げに届いたばかりのジェリービーンズを口の中に放り込んだ。
そろそろかしら? 真珠はお昼を心待ちにしている。視界いっぱいに広がる青空を楽しみながらハンモックで体を揺らしていると、お待たせしました!とばかりにクルックスが正午を伝えた。
「よし、皆ランチタイムだ!」
フランクがゆっくり降下を始める。軒並ぶ小高い丘の中から一番眺めの良さそうな丘を選んで着陸する。小粋な水色の花々が咲いていた。
今日のランチ当番はクルックスだ。食事当番はフランク以外の三人で回していた。フランクの作る料理はいつも大雑把すぎたし、体が大き過ぎて小回りが利かない。元々白クジラの主食は雲だ。フランクが雑食になったのはマッシュのせいらしい。
マッシュたちが地上でテーブルを設置したり、お茶を淹れたりと食事の準備をしている間、いつもフランクは自由に空に戻って雲を集めた。一番美味しそうな部分を好きなだけちぎって、空では食べずに必ず地上で皆と食べた。
今日のクルックスのメニューはサンドイッチだ。真珠に頼んで食料庫から野菜やジャムを取り出してきていた。鼻歌まじりにクルックスがサンドイッチを仕上げている。ティーカップが用意され、サンドイッチが大皿に乗せられる。
フランクが今から食べる雲を両手いっぱいに抱えて降りて来るのを見て、マッシュが合図をする。
「今日も皆で美味しい食事を食べられることに感謝しよう!」
マッシュがそう言い終わると、南の空から声が聞こえた。
「旦那ー! マッシュの旦那ー!」
一羽の鳥がこちらへ近づいてくる。どうやらカモメらしい。
頭には笠のような変わった帽子を被っている。帽子の正面には青いツバメのマークが印刷されており、体の大きさほどある大きな鞄を肩から斜めに掛けていた。鞄にも同じツバメのマークがついている。
「ありゃ? 前に来た時より大所帯になってんなー」
そう言いながらカモメが地面に舞い降りた。大きな鞄は引きずるよりも早く、両羽で上手く抱え込む。
「おっす! フランク、また一段とでかくなったか?」
カモメはフランクの正面に立ち、エヘヘと照れる白クジラを極上のスマイルで見上げた。
「やあスパイキー。私に用事かい?」マッシュが挨拶する。
「おっと! そうだった、旦那にお届け物ですぜ」
「お疲れさま」
小さな荷物を受け取るとマッシュはスパイキーを食事に誘った。
「たまには一緒にランチでもどうだい?」
「いえ、あっしはまだ、この先に一軒運ぶブツがあるんで、お気持ちだけいただきやす!これは取扱い注意な代物なんでさ」
「そうか、それは残念だ。ではまたの機会に」
「へい! 腕がなりまっさ! ではあっしはこれで失礼しやす!」
「お疲れさまー! 気をつけてね!」
飛んでいくスパイキーの後ろ姿に向かってフランクが声をかけた。返事をするように一回転を繰り出してスパイキーは遠く離れていった。
「ねぇフランク。今のは?」
「郵便配達員のスパイキーだよ。ふふ。でも本人は『運び屋』だってすごい言い張るんだけどね!『あっしに運べないブツはない』っていうのが自慢みたいだよ!」
「こんなところまでどなたが贈り物を?」
クルックスがマッシュの荷物に興味を示す。
「ハハ! 贈り物ではない。これはギャレット社に注文しておいたジェリービーンズさ。私はビーンズの買い置きはしない主義でね」
「ポォ! さすがマッシュさん。こだわりの数だけ、紳士としての品格が高いのですね」
マッシュは「紳士」「品格」という言葉に反応した。目を一瞬だけ力強く開くと、うっすらとにやけて、得意げに届いたばかりのジェリービーンズを口の中に放り込んだ。