その日、マッシュ、真珠、クルックス、フランクの四人はフラシアスとともにそこで島亀との出来事を祝い、翌日出発することにした。
フラシアスは言う。
「白クジラの群れはわしは見とらんのじゃがの。おまえさんらが出会ったマザーツリーが西に向かったと言っておったなら、もしかするとその群れは海を越えたスノーディアを目指しとるかも知れんと思うんじゃ。フランク、おまえさんとはぐれても、おまえさんを探すためにその場に留まれなかった理由も考えるとな。そこへ行くときは出産のためだと聞いたことがあるんじゃ。急いでおったんじゃろうて」
「ああ! マザーも同じようなことを言っていました。急いでいたようだったと……」
「そうか。ならやはりそうかもしれんの。しかしわしもスノーディアの詳しい位置まではわからんのじゃ。ここから北の方角だということだけはわかるがの。クイーンなら、もしかしたら群れを見とるかもしれんの。それにスノーディアの場所もクイーンなら多分知っておろうの。何しろクイーンはエルセトラの誰よりも長生きじゃからの」
「クイーンとはどなたです?」
「クイーンツリーじゃ。知らんか?」
「ええ。存じません。そのクイーンという方にはどちらに行けば会えるでしょうか」
「ふむ、そうか。ここから北東へ四日ほど進むと恐ろしく大きな森にぶつかる。それこそが女王の森と呼ばれるクイーンツリーの森じゃ。おまえさんらは飛んでいけるから二日もあれば着くはずじゃよ」
「じゃあ、そこに行けばクイーンが道を教えてくれるかもだね!」
フランクはなんだかワクワクしている。
「クイーンはマザーツリーたちの母ちゃんみたいなもんじゃ。クイーンの森は相当深いでの。会えるかどうかもわからん。気をつけて行くんじゃぞ。おまえさんらの旅の無事を祈っておるよ」
フラシアスが見送る中、一行は北東の女王の森を目指し旅立った。
フランクの上で真珠がつぶやいた。
「なんだかなぁ」
「どうしたんですか真珠さん?」
「んー。最初マザーツリーに西に行くように教えてもらって、わたしたちはここまで来たじゃない?なのに今度は北東だ! なんて、振り出しに戻されてる気分だわ。なんでフランクがワクワクしてるのか、わたしにはわからないし」
「戻ってるなんて思ってないよ。だってクイーンならぼくの仲間の居場所を知ってるかもしれないんだから」
「のんきねぇ。フランクは」
マッシュは少し笑いながら真珠をたしなめる。
「ハハ! 真珠はせっかちだな、突き進むことが必ずしも吉を生み出すとは限らないぞ」
「なによ、それぇ!」
口を尖らせて真珠は不服そうだ。クルックスが何やら教訓めかしてヤシの木の天辺から言った。
「つまり、時には遠回りしたり、あるいは立ち止まったりすることも、目的を達成することの重要な要素だということですよ」
「ぶぅー」
真珠は流れる青空を見ながら、ふとマッシュたちに出会う前の自分を思い出していた。
思いきり外で走り回りたくても、他のみんなのように遊べない。毎日、学校に行きたくても、他のみんなのように毎日学校に行けない。いつからか、自分は他のみんなのようには何もできないと思っていた。みんな、みんな、みんな……。いつもそればかりが頭の中を駆け巡っていた。入院生活が長くなり、どんどんみんなから離されていくようで、とても怖かった。
わたしの目的っていったい何なんだろう。みんなのようになるのが、本当に自分の目的なのかな?
一行は北東のクイーンツリーの森を目指し、今日も青空の中を泳いでいく。
フラシアスは言う。
「白クジラの群れはわしは見とらんのじゃがの。おまえさんらが出会ったマザーツリーが西に向かったと言っておったなら、もしかするとその群れは海を越えたスノーディアを目指しとるかも知れんと思うんじゃ。フランク、おまえさんとはぐれても、おまえさんを探すためにその場に留まれなかった理由も考えるとな。そこへ行くときは出産のためだと聞いたことがあるんじゃ。急いでおったんじゃろうて」
「ああ! マザーも同じようなことを言っていました。急いでいたようだったと……」
「そうか。ならやはりそうかもしれんの。しかしわしもスノーディアの詳しい位置まではわからんのじゃ。ここから北の方角だということだけはわかるがの。クイーンなら、もしかしたら群れを見とるかもしれんの。それにスノーディアの場所もクイーンなら多分知っておろうの。何しろクイーンはエルセトラの誰よりも長生きじゃからの」
「クイーンとはどなたです?」
「クイーンツリーじゃ。知らんか?」
「ええ。存じません。そのクイーンという方にはどちらに行けば会えるでしょうか」
「ふむ、そうか。ここから北東へ四日ほど進むと恐ろしく大きな森にぶつかる。それこそが女王の森と呼ばれるクイーンツリーの森じゃ。おまえさんらは飛んでいけるから二日もあれば着くはずじゃよ」
「じゃあ、そこに行けばクイーンが道を教えてくれるかもだね!」
フランクはなんだかワクワクしている。
「クイーンはマザーツリーたちの母ちゃんみたいなもんじゃ。クイーンの森は相当深いでの。会えるかどうかもわからん。気をつけて行くんじゃぞ。おまえさんらの旅の無事を祈っておるよ」
フラシアスが見送る中、一行は北東の女王の森を目指し旅立った。
フランクの上で真珠がつぶやいた。
「なんだかなぁ」
「どうしたんですか真珠さん?」
「んー。最初マザーツリーに西に行くように教えてもらって、わたしたちはここまで来たじゃない?なのに今度は北東だ! なんて、振り出しに戻されてる気分だわ。なんでフランクがワクワクしてるのか、わたしにはわからないし」
「戻ってるなんて思ってないよ。だってクイーンならぼくの仲間の居場所を知ってるかもしれないんだから」
「のんきねぇ。フランクは」
マッシュは少し笑いながら真珠をたしなめる。
「ハハ! 真珠はせっかちだな、突き進むことが必ずしも吉を生み出すとは限らないぞ」
「なによ、それぇ!」
口を尖らせて真珠は不服そうだ。クルックスが何やら教訓めかしてヤシの木の天辺から言った。
「つまり、時には遠回りしたり、あるいは立ち止まったりすることも、目的を達成することの重要な要素だということですよ」
「ぶぅー」
真珠は流れる青空を見ながら、ふとマッシュたちに出会う前の自分を思い出していた。
思いきり外で走り回りたくても、他のみんなのように遊べない。毎日、学校に行きたくても、他のみんなのように毎日学校に行けない。いつからか、自分は他のみんなのようには何もできないと思っていた。みんな、みんな、みんな……。いつもそればかりが頭の中を駆け巡っていた。入院生活が長くなり、どんどんみんなから離されていくようで、とても怖かった。
わたしの目的っていったい何なんだろう。みんなのようになるのが、本当に自分の目的なのかな?
一行は北東のクイーンツリーの森を目指し、今日も青空の中を泳いでいく。