そのとき勢いよく、ドアが開いた。
 僕はビクッと肩を震わせる。

「おい、柚希がいるぞ?」
「なんだ学校来てたのかよ」

 そこにいたのは、いつも僕をいじめていた男子グループと、そこに加わっている女子グループ。
 いつの間にか、二年生最後のホームルームも終わっていたようだ。

「あ、ほんとだー、柚希くんじゃん」
「また心霊現象起きねーだろうな?」
「バカ、ビビってんじゃねーよ」

 突っ立っている僕とハルの前に、ぞろぞろとクラスメイトが出てくる。
 そしてその中のひとりが、乱暴に突き飛ばされ、コンクリートの上に倒れた。

「ほらっ! よかったな、聖亜!」
「お前の大好きな幼なじみがいたぞ?」

 僕は目を丸くして、倒れている生徒を見る。

「聖亜?」

 聖亜の制服は乱れていて、髪もぐしゃぐしゃ、頬には殴られたようなあとがあった。

「ど、どうした……」
「触んなよ!」

 駆け寄って伸ばした手を、聖亜に振り払われた。
 それを見たクラスメイトたちが、げらげら笑っている。

「聖亜ー、強がんなよ!」
「素直に助けてもらえばいいじゃん、ユズくんにさー」

 僕はクラスメイトたちをにらみつける。
 なんなんだ、あいつら。標的を僕から聖亜に変えたってことか?

 するとひとりの生徒が近づいてきて、聖亜に向かってこう言った。

「なぁ、聖亜? せっかくだからここで告ったらどうだ?」

 顔を上げた聖亜が、生徒をにらみつける。

「俺は男にしか興味がありませーん。男が好きでーす。ユズくんが好きでーす、ってさ」

 呆然とする僕の前で聖亜が立ち上がる。そして勢いよくその生徒につかみかかった。
 途端にわあっと声が上がり、仲間たちが駆け寄ってくる。

「うるせー! 黙れ!」
「離せよ! ほんとのこと言っただけだろ!」
「お前、うぜぇんだよ……死ね!」
「死ぬのはお前だろ! 聖亜!」

 やばい。乱闘になる……と思った瞬間、突然聖亜が手を離した。