重いドアを開けて、屋上に飛び出る。
 今日も頭の上には、青い空が広がっている。
 肌に当たる空気は、ずいぶん柔らかくなった。
 そしてフェンスの向こうを眺めるように、制服姿のハルが立っていた。

「ハル!」

 ゆっくりと振り返ったハルが、ちょっと驚いたような顔をする。

「ユズ? なんで? いま授業中……」

 僕はハルに駆け寄ると、思わずその体を抱きしめてしまった。

「よかった。会えて」
「ユズ……?」
「昨日からずっと、ハルのこと考えてた」

 ハルは僕に抱きしめられたまま、黙っている。

「昨日、あんな別れ方しちゃったから……」
「いいんです。ボクもなんかムキになっちゃって……ごめんなさい」

 そっと体を離すと、ハルがちょっと困ったように笑った。

「ハル……なんかあった?」
「え?」
「なんか……いつもと違う」

 ハルはもう一度笑って、僕から視線をそらす。
 そしてフェンスの向こうを眺めながらつぶやいた。