「ハル?」

 ハルがハッとした顔で僕を見る。

「どうして泣いてるの?」
「えっ、ボク、泣いてます?」

 聖亜と同じ反応だ。

「泣いてるよ。バスケ見て、なにか思い出した?」

 ハルは目元をこすってから、ぼそっとつぶやく。

「はい、なんとなくですけど」
「思い出したの!? もしかしてハル、バスケ部だったとか?」
「いえ、違うんです。こんなふうにバスケを見ていたことがあったなぁって……」
「バスケを見てた?」
「はい。すごくカッコいいなぁって思いながら見てました」

 僕の頭に、同じような光景が浮かぶ。

「それって、児童公園のミニバスのゴールじゃない?」
「え?」
「僕も小学生のころ、見てたことがあるんだ。シュート決める姿を見て、すごいなぁって憧れてた」

 ハルの顔が明るく輝く。

「はい、そうです! たぶん公園のバスケットゴールです。それでボクも憧れてました。ボクもあんなふうになりたいって思ったんです!」
「それって……誰のこと?」

 僕の中では答えが見えていたけど、あえて聞いてみる。
 でもハルは困ったように首をかしげた。

「わからない。誰だろう。ボクの……大事な人だった気がします」

 ハルの……大事な人?
 僕はごくんと唾を飲む。
 ハルの大事な人が……聖亜?