ありがとう朱里!
あたしはもう失敗することをおそれないよ。
メールを送りパソコンを閉じようとすると、帰宅を告げるお父さんの声が玄関から聞こえた。
「ただいまー、茜ぇーいるかい? お父さん今日は疲れたよぉ」
あたしは立ちあがり、部屋を出て階段をかけおりる。
「お! おおお、お父さん! おかえりなさい!」
「おや? 茜、今日はとても元気だね。さては学校でなにかいいことあったな?」
勢いよく飛び出してきたあたしを見て、お父さんはネクタイを外しながらすこし驚いた顔をしたけど、すぐに悪戯っぽく笑った。
「あとで背中に乗ってほしいな。さあ今日はなに食べようか、たまには一緒に映画でも見る? ほらこないだ録画した、底なし沼に沈んでくブタを助ける耳のでかい妖精が出てくるアニメがあったろ」
「ううん! そのぎぎ…逆! み、みみんな、みんなからここ、孤立し…しちゃった! ブ、ブタのやつ、っは、みみ…見てもいい、いいよ!」
お父さんが目を丸くして、不思議そうにあたしを見る。
「それなのに、そんなに元気なのかい?」
少しだけ、お父さんの表情にかげりが見えた。
「うんっ! ででも、あた…しはもう、失敗するっ…することをお、お…おそれな、ななーいんだ!」
いつもよりよくしゃべるあたしに少し安心したのか、お父さんの表情はもとのやわらかい表情へと戻っていった。
「そうかぁ、じゃあ今日は茜のクラスからの孤立記念に……外食に行こう!」
「お、お、お父さっ…ん、あたっ、あたし、がっ外食じゃなくていい、いいよ! あれがいい! サ、サン…ドドイッチ!」
「サンドイッチ? そんなものでいいの? よおーし、じゃあ今日は張り切って、サンドイッチ一緒に作るか!」
「うん! つ…つくっ、作る!」
お父さんは付けようとしていたエプロンを脱ぐと、ワイシャツの胸元をつまんで首を傾げた。
「じゃああれだな、ヤマタケまで星が丘の自然酵母のイギリス食パンを買いに行かなくちゃな! ……服はとりあえずこれでいいか」
「う、う…ううん、ちっちがっ、お、お父、ささん、サンドイッ…イチに…は、やすっ、やすくて四角い食パンのがあ、あいそう…だっ、だよ!」
「おお? そうか、じゃあそうしよう。とにかく食パンとハムを買いにヤマタケ突撃だ! はやく行かないとしまっちゃうぞ。茜隊員! 準備はいいかい⁉」
「はっ、はい!」
「違うだろ、茜っ! そういうときは⁉」
「エッ…イ、イエッサー!」
「よろしい!」
お父さんはネクタイを放り投げると、両腕を大きく上にあげて、あたしをくすぐるために追いかけ回した。
あたしはもう失敗することをおそれないよ。
メールを送りパソコンを閉じようとすると、帰宅を告げるお父さんの声が玄関から聞こえた。
「ただいまー、茜ぇーいるかい? お父さん今日は疲れたよぉ」
あたしは立ちあがり、部屋を出て階段をかけおりる。
「お! おおお、お父さん! おかえりなさい!」
「おや? 茜、今日はとても元気だね。さては学校でなにかいいことあったな?」
勢いよく飛び出してきたあたしを見て、お父さんはネクタイを外しながらすこし驚いた顔をしたけど、すぐに悪戯っぽく笑った。
「あとで背中に乗ってほしいな。さあ今日はなに食べようか、たまには一緒に映画でも見る? ほらこないだ録画した、底なし沼に沈んでくブタを助ける耳のでかい妖精が出てくるアニメがあったろ」
「ううん! そのぎぎ…逆! み、みみんな、みんなからここ、孤立し…しちゃった! ブ、ブタのやつ、っは、みみ…見てもいい、いいよ!」
お父さんが目を丸くして、不思議そうにあたしを見る。
「それなのに、そんなに元気なのかい?」
少しだけ、お父さんの表情にかげりが見えた。
「うんっ! ででも、あた…しはもう、失敗するっ…することをお、お…おそれな、ななーいんだ!」
いつもよりよくしゃべるあたしに少し安心したのか、お父さんの表情はもとのやわらかい表情へと戻っていった。
「そうかぁ、じゃあ今日は茜のクラスからの孤立記念に……外食に行こう!」
「お、お、お父さっ…ん、あたっ、あたし、がっ外食じゃなくていい、いいよ! あれがいい! サ、サン…ドドイッチ!」
「サンドイッチ? そんなものでいいの? よおーし、じゃあ今日は張り切って、サンドイッチ一緒に作るか!」
「うん! つ…つくっ、作る!」
お父さんは付けようとしていたエプロンを脱ぐと、ワイシャツの胸元をつまんで首を傾げた。
「じゃああれだな、ヤマタケまで星が丘の自然酵母のイギリス食パンを買いに行かなくちゃな! ……服はとりあえずこれでいいか」
「う、う…ううん、ちっちがっ、お、お父、ささん、サンドイッ…イチに…は、やすっ、やすくて四角い食パンのがあ、あいそう…だっ、だよ!」
「おお? そうか、じゃあそうしよう。とにかく食パンとハムを買いにヤマタケ突撃だ! はやく行かないとしまっちゃうぞ。茜隊員! 準備はいいかい⁉」
「はっ、はい!」
「違うだろ、茜っ! そういうときは⁉」
「エッ…イ、イエッサー!」
「よろしい!」
お父さんはネクタイを放り投げると、両腕を大きく上にあげて、あたしをくすぐるために追いかけ回した。