ーー 3月。

卒業式を終えた4人は、途中でゼリー炭酸を買うと、秘密基地に足を踏み入れていた。

「こういう時は、おめでとうと言うものなのだろ? 」

そんな先客の猫の姿をした神の祝言を貰いつつ、5人分のゼリー炭酸で乾杯をする。

「でも、みんな町を出ていっちゃうでしょ? 寂しいよ〜」

双葉、太陽、類は、それぞれ別々の大学への進学が決まれば、町を離れることになる。まだ合格発表の前だが、それぞれが相応の手応えを感じていた。

「まぁ、そんな頻繁に会えることはなくなるけど、私達は離れていても、ずっと一緒だよなんて、よくある台詞を口にしても、バチは当たらないでしょ!」

双葉は意気揚々とサムズアップを繰り出す。

「私も。大学に通いつつ、ホラー作家を目指して、執筆するつもりだし、皆も頑張って、自分の人生を歩んでよね! なんて言える日が来るなんて、思っても居なかったよ!」

穂は、馴れない言葉に面映くなり、誤魔化し笑いを浮かべる。

「ま! なるようになるっしょ! 俺はずっとそうやって来たし、それは何も変わらんしょ!」

相変わらずの底抜けに明るい太陽は、楽観的に未来図を組み立てる。

「じゃあ、最後にそんな未来に向けて、歌っておく? 卒業バージョンで!」

その双葉の提案に皆が、賛成を含んだ笑みを浮かべる。

「よし! じゃあ行くよ、せーの!」

こうして基地内に重なり合うハーモニー。5人の旗印。それは、いつも通りの濁りのない、何処までも空へ伸びるような、真っ直ぐな声色となって、5人の記憶と重なり、永遠を謳い続けていく。