ーーー 「はぁ。はぁ。はぁ。よ、ヨミちゃん……」
双葉が基地内に辿り着くと、机の上にポツンと待ち構えていたかのように佇むヨミの姿があった。
「来たか。まぁ、立ち話もなんだ。座るが良い」
「双葉ねぇ………ヨミ……?」
続いて続々と基地内に辿り着く面々も、ヨミの姿を見つけて困惑を浮かべる。
「お主らも席につけ。大事な話しがある。ったく類のやつ。面倒事を押し付けよって」
「ルイルイ? ルイルイがどうしたの!? 」
類という名前に過敏な反応を見せる双葉であったが、早く席につけと言わんばかりのヨミの目配せに、ようやく従い定位置へと向かう。
他の3人もまた、訳も分からず着席をする。
「さて。単刀直入に言えば、類は消えた。この世界から存在がな。お主らの中以外の記憶からも、綺麗さっぱりと消え去った」
「ど、どうして! だって、それは私が!」
「まぁ、落ち着け。一からちゃんと話す」
1度、勢いのまま机に手を打ちつけて立ち上がった双葉は、再びゆっくりと腰を落ち着かせる。
「時はあの日に遡る……」
ーー 9年前。夜見神社。
「ヨミ……様……。お願いします! お願いします! もし、双葉を助けれられるのなら、俺、何でもします!」
「フッ。自分が悲しまないためか……。まぁ、それもまた人の面白いところなのかもしれぬな。よかろう。双葉を助ける術を教えてやろう」
「あ、ありがとうございます!」
「では、早速だが。何かを得ようとするのらば、同じ代価が必要となる。所謂、等価交換という奴だ。話は簡単だ。あの娘に寿命を与えたくば、お主の寿命を差し出すのだ」
「寿命………」
類はの鼓膜にその言葉の意味が浸透するには、そう時間を要する事はなかった。
「まぁ、そうだろうな。人なんてか弱く、ほんの一瞬の灯火でしか輝けない小さき者。そんな貴重な時間を分け与えなど、そう簡単には……」
「分かりました! 」
「何?」
「分かりました。俺の寿命をいくらでも使って下さい。それで双葉が助かるのなら、いくらでも!!」
そうヨミを見つめる濁りなき眼は、迷いなんて微塵も感じさせず、ヨミの期待を裏切る事になった。
「おい。人の子よ。それが何を意味するのか分かっているのか?」
「勿論です! 」
「お主は今ここで命を落としたとしても、あの娘を生したいと? 」
「はい!」
「っふ。フハハっ!! 面白い! 面白いぞ人の子よ!」
ヨミは意表を突かれ声高らかに、笑い声を木霊させる。
「良かろう。ただ、全ての寿命を分け与えるというのは、気が引けるな」
「でしたら、双葉が18歳になる9年後。それまでで大丈夫です! それまでの寿命を双葉に! 」
「9年後? また中途半端な数字だな」
「いいえ。中途半端じゃないです。それまでにいっぱい!いっぱい!幸せになって、大人になる前に死にたいです! 子供のままで、友達のままで、死にたいです」
年端のいかない小さき者の訴えは、ヨミの心に新しい人間像を作り上げていく。
「まだ幼子の癖に見上げた奴だ。益々気に入った。良かろう。では、あの娘が18となるその日まで、お主を生かし、その先の寿命をあの与えよう」
「ありが……とう……ございます……」
類は、願いが届いた安堵から、蓄積した疲労が一気に体に流れ込み、泥濘に倒れ込む。
そしてゆっくりと薄れゆく視界の中で、ヨミの言葉が鼓膜に届いた。
「人の子よ。達者でな」
双葉が基地内に辿り着くと、机の上にポツンと待ち構えていたかのように佇むヨミの姿があった。
「来たか。まぁ、立ち話もなんだ。座るが良い」
「双葉ねぇ………ヨミ……?」
続いて続々と基地内に辿り着く面々も、ヨミの姿を見つけて困惑を浮かべる。
「お主らも席につけ。大事な話しがある。ったく類のやつ。面倒事を押し付けよって」
「ルイルイ? ルイルイがどうしたの!? 」
類という名前に過敏な反応を見せる双葉であったが、早く席につけと言わんばかりのヨミの目配せに、ようやく従い定位置へと向かう。
他の3人もまた、訳も分からず着席をする。
「さて。単刀直入に言えば、類は消えた。この世界から存在がな。お主らの中以外の記憶からも、綺麗さっぱりと消え去った」
「ど、どうして! だって、それは私が!」
「まぁ、落ち着け。一からちゃんと話す」
1度、勢いのまま机に手を打ちつけて立ち上がった双葉は、再びゆっくりと腰を落ち着かせる。
「時はあの日に遡る……」
ーー 9年前。夜見神社。
「ヨミ……様……。お願いします! お願いします! もし、双葉を助けれられるのなら、俺、何でもします!」
「フッ。自分が悲しまないためか……。まぁ、それもまた人の面白いところなのかもしれぬな。よかろう。双葉を助ける術を教えてやろう」
「あ、ありがとうございます!」
「では、早速だが。何かを得ようとするのらば、同じ代価が必要となる。所謂、等価交換という奴だ。話は簡単だ。あの娘に寿命を与えたくば、お主の寿命を差し出すのだ」
「寿命………」
類はの鼓膜にその言葉の意味が浸透するには、そう時間を要する事はなかった。
「まぁ、そうだろうな。人なんてか弱く、ほんの一瞬の灯火でしか輝けない小さき者。そんな貴重な時間を分け与えなど、そう簡単には……」
「分かりました! 」
「何?」
「分かりました。俺の寿命をいくらでも使って下さい。それで双葉が助かるのなら、いくらでも!!」
そうヨミを見つめる濁りなき眼は、迷いなんて微塵も感じさせず、ヨミの期待を裏切る事になった。
「おい。人の子よ。それが何を意味するのか分かっているのか?」
「勿論です! 」
「お主は今ここで命を落としたとしても、あの娘を生したいと? 」
「はい!」
「っふ。フハハっ!! 面白い! 面白いぞ人の子よ!」
ヨミは意表を突かれ声高らかに、笑い声を木霊させる。
「良かろう。ただ、全ての寿命を分け与えるというのは、気が引けるな」
「でしたら、双葉が18歳になる9年後。それまでで大丈夫です! それまでの寿命を双葉に! 」
「9年後? また中途半端な数字だな」
「いいえ。中途半端じゃないです。それまでにいっぱい!いっぱい!幸せになって、大人になる前に死にたいです! 子供のままで、友達のままで、死にたいです」
年端のいかない小さき者の訴えは、ヨミの心に新しい人間像を作り上げていく。
「まだ幼子の癖に見上げた奴だ。益々気に入った。良かろう。では、あの娘が18となるその日まで、お主を生かし、その先の寿命をあの与えよう」
「ありが……とう……ございます……」
類は、願いが届いた安堵から、蓄積した疲労が一気に体に流れ込み、泥濘に倒れ込む。
そしてゆっくりと薄れゆく視界の中で、ヨミの言葉が鼓膜に届いた。
「人の子よ。達者でな」