ーーー 駐車場から基地までの道中で、前を歩いていた類は、不意に足を止めて、前方と後方に人の気配が無いことを確認する。
「それで、話があるんだよね? 何? 」
そうして切り出された言葉に、太陽は嬉しそうに微笑む。
「さすが親友だね! 俺の意図を汲み取ってくれたってわけか」
「まぁそこは、親友だしね。ここまで長い付き合いなら、簡単だよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇの。普段からこんなに素直だったらいいのになぁ〜。まぁ、鈍感なフリをしてる類も、らしさみたいな事か。気づいてんだろ? 穂の気持ち?」
太陽の躊躇なく踏み込む言葉に、今度は類が笑みを浮かべる。
「鈍感なフリね。それはまた、オブラートに包んだ言い方だね。ただ冷たいだけだよ。確かに、穂から向けられている気持ちは、勘違いでないのなら、そうかもとは思っていた。でも正直。今は、そんな事を考えてる余裕がない。だから、見て見ぬふりをしてるんだ」
「なるほどね。まぁ、そこに関してとやかく言う事はしないさ。俺も、きっと類の立場ならそう思うと思うし、正直、俺も余裕はないからな」
そう顔を見合わせ、苦々しい笑みを交わす。
「それでよ。もう一つというか、これが一番、今、重要な事だと思うんだけどよ。穂には、このまま黙っているつもりなのか? 」
類はその言葉を受けて、伏し目がちに小さく首を左右に振る。
「ま、だよな。黙っているわけには行かないよな。とはいえ、簡単に信じてもらえるかも分からない。言い出すタイミングもな」
「タイミングなら正にあるだろ? 明日、こんなにもいいタイミングが他にないってくらいだ」
「そう………か。そうかもな。まるで、神様が見ているかのような、そんなタイミングだったな。それで? ストレートに言っても、信じてもらえる保証はないが?」
「だね」
そこで2人の間に、夏の風が吹き過ぎる、僅かな時が流れる。
「やっぱり、論より証拠が一番なのかな」
類はそう覚悟を決めたかのように顔を上げると、太陽を視界に捉える。
「ああ。俺も、それしかないと思ってた。もちろん、ストレートに話すところは話すとして、あいつに頼るしかないか」
「うん。それしかないだろうね。多分、そこら辺に居るんだろうし。何なら、この話も聞いているんだろ? ヨミ!」
類がそう誰も居ない空間に、その名を轟かせると、背後の草木が、カサカサと揺れ、その草木の隙間からピョンと、真っ白な毛並みの猫が2人の前に姿を現した。
「やっぱり居たか」
「類の小僧よ。うぬを使おうと言うのか?」
「乗りかかった船だろ? 今更、ひとつやふたつ、協力してくれたって、減るもんはないだろ?」
「ふっ。生意気な人の子よ。よかろう。お主が何を企んでいるのかは、もう分かっておる。さて、人の子の心には、纏う強き衣があるのか、それともそれは、見せかけに過ぎないのか、見させてもらおうではないか」
ヨミはそうピクっと鼻を揺らすと、再び茂みの中へと消えていく。
「相変わらず高貴な猫だとこと」
太陽は、少し態度のデカい小さな白い背中に、そう吐き捨てて肩を竦める。
「まぁ何にせよ。信じるに値する材料が出来たんだ、オカルト好きな穂になら、充分過ぎる程のね」
太陽とは打って変わって、類は清々し気に笑みを浮かべる。
「そうだな……。なぁ、類」
「ん?」
「この先、何があろうと、俺とお前は親友だよな?」
すると珍しくしおらしくそんな事を問いかける太陽。
「そうだね。きっと、どんな事があろうと、俺は太陽のこと、親友って呼んでいると思うよ」
「そうか。そうだよな」
その類の返答に満足したように、いつもの調子に戻った太陽は、その名に相応しい笑みを浮かべた。
「それで、話があるんだよね? 何? 」
そうして切り出された言葉に、太陽は嬉しそうに微笑む。
「さすが親友だね! 俺の意図を汲み取ってくれたってわけか」
「まぁそこは、親友だしね。ここまで長い付き合いなら、簡単だよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇの。普段からこんなに素直だったらいいのになぁ〜。まぁ、鈍感なフリをしてる類も、らしさみたいな事か。気づいてんだろ? 穂の気持ち?」
太陽の躊躇なく踏み込む言葉に、今度は類が笑みを浮かべる。
「鈍感なフリね。それはまた、オブラートに包んだ言い方だね。ただ冷たいだけだよ。確かに、穂から向けられている気持ちは、勘違いでないのなら、そうかもとは思っていた。でも正直。今は、そんな事を考えてる余裕がない。だから、見て見ぬふりをしてるんだ」
「なるほどね。まぁ、そこに関してとやかく言う事はしないさ。俺も、きっと類の立場ならそう思うと思うし、正直、俺も余裕はないからな」
そう顔を見合わせ、苦々しい笑みを交わす。
「それでよ。もう一つというか、これが一番、今、重要な事だと思うんだけどよ。穂には、このまま黙っているつもりなのか? 」
類はその言葉を受けて、伏し目がちに小さく首を左右に振る。
「ま、だよな。黙っているわけには行かないよな。とはいえ、簡単に信じてもらえるかも分からない。言い出すタイミングもな」
「タイミングなら正にあるだろ? 明日、こんなにもいいタイミングが他にないってくらいだ」
「そう………か。そうかもな。まるで、神様が見ているかのような、そんなタイミングだったな。それで? ストレートに言っても、信じてもらえる保証はないが?」
「だね」
そこで2人の間に、夏の風が吹き過ぎる、僅かな時が流れる。
「やっぱり、論より証拠が一番なのかな」
類はそう覚悟を決めたかのように顔を上げると、太陽を視界に捉える。
「ああ。俺も、それしかないと思ってた。もちろん、ストレートに話すところは話すとして、あいつに頼るしかないか」
「うん。それしかないだろうね。多分、そこら辺に居るんだろうし。何なら、この話も聞いているんだろ? ヨミ!」
類がそう誰も居ない空間に、その名を轟かせると、背後の草木が、カサカサと揺れ、その草木の隙間からピョンと、真っ白な毛並みの猫が2人の前に姿を現した。
「やっぱり居たか」
「類の小僧よ。うぬを使おうと言うのか?」
「乗りかかった船だろ? 今更、ひとつやふたつ、協力してくれたって、減るもんはないだろ?」
「ふっ。生意気な人の子よ。よかろう。お主が何を企んでいるのかは、もう分かっておる。さて、人の子の心には、纏う強き衣があるのか、それともそれは、見せかけに過ぎないのか、見させてもらおうではないか」
ヨミはそうピクっと鼻を揺らすと、再び茂みの中へと消えていく。
「相変わらず高貴な猫だとこと」
太陽は、少し態度のデカい小さな白い背中に、そう吐き捨てて肩を竦める。
「まぁ何にせよ。信じるに値する材料が出来たんだ、オカルト好きな穂になら、充分過ぎる程のね」
太陽とは打って変わって、類は清々し気に笑みを浮かべる。
「そうだな……。なぁ、類」
「ん?」
「この先、何があろうと、俺とお前は親友だよな?」
すると珍しくしおらしくそんな事を問いかける太陽。
「そうだね。きっと、どんな事があろうと、俺は太陽のこと、親友って呼んでいると思うよ」
「そうか。そうだよな」
その類の返答に満足したように、いつもの調子に戻った太陽は、その名に相応しい笑みを浮かべた。