何時間程寝たのかわからないが、目覚めると身体の痛みは取れていた。
太陽の傾き的に、おそらく二時間程度だろうか。
本来二時間で筋肉痛が治るわけがないので、あれらの痛みはドーピングパウダーの副作用と思って間違いなさそうだ。
また、効果が高過ぎることから、一個の鉱石で取れる粉末を全部摂取するのも良くない。多分、通常の戦闘で使用する場合は三分の一でも十分だ。もし、一個分丸々使用するのはヤバい強敵と遭遇する時にしていこう。
爺さんの話では、こうして鉱石やら葉っぱを粉末にして使用するという文化はこの世界にはない。
ということは、ハッピーパウダー以外の強化系麻薬も卸せば良い金稼ぎになりそうだ。
「でも……ドーピングパウダーは危険過ぎるな」
先程の肉体強化っぷりはヤバい。あまりに人間の力を越え過ぎている。
これを人間の手に渡すのは危険だ。というか、俺が危険だ。
俺だったら、ドーピングパウダーを摂取して肉体強化をして、売人の持っている粉を全部奪って自分のものにするだろう。
異世界の人間にそんな知能があるのかはわからないが、慎重にことを運んだ方がいいのは間違いない。ドーピングパウダーは自分用にしておこう。
俺は身体を大きく伸びをして、ドーピングパウダーが採れる赤い鉱石がある場所まで戻って、ひらすらに赤い鉱石を調合してドーピングパウダーに変えていく。
異世界は色々便利だ。このスキルが一体何のスキルなのかはわからないが、触れるだけで即麻薬を調合できるなど、まさしく俺向き過ぎる。
せっかく異世界転生したのだから、もっと異世界ちっくなユニークスキルを持ってみたかったとも思うが、場合によってはこの麻薬調合スキルは手に入る麻薬次第で金持ちにも最強にもなれる。ある意味チートだ。
それに、売人としてのノウハウがある俺にとってはもうこれ以上ないとも言える。自分で生成して自分で卸せるとか最強過ぎるあろう。それに、爺さんの話から察する限り、そもそも麻薬という概念がないのだから、当然麻薬取締官もいない。麻薬取締官がいない世界で麻薬を売り捌けるなど、もはややりたい放題だ。最高過ぎる。
ただ、俺がやり過ぎると、もしかすると麻薬取締官に該当するものを国側も生み出して規制を掛けてくるかもしれない。慎重に売っていくのが良いだろう。
「さてと……ドーピングパウダーもいっぱい取れたし、とりあえずこんなものか」
手持ちの瓶がハッピーパウダーとドーピングパウダーで埋まってしまった。
とりあえず、当面はこの二種類で生活していこう。
早速ドーピングパウダーを先程摂取した十分の一程度だけ体内に入れている。
「うん、この分量でも身体が軽くなるし、力も入るな。十分十分」
一回のドーピングパウダーの使用で効果が継続するのは三〇分程度だ。
その間、俺はなるべく体に負荷を掛けるようにして筋トレをしつつ移動し、三〇分経って効果が消えたら再度摂取する、という形を繰り返した。
今この銀髪青年の身体は筋肉も全然なくてひょろいが、こうしてドーピングパウダーを使いながら身体を鍛えていけば、体の基礎筋力が上がる。
通常の状態でドーピングパウダー十分の一くらいの力を発揮できるくらいになれば、それだけでも人間としてはかなり強い部類に入るだろう。人間くらいならドーピングパンチで一発K・Oだ。
これを通常状態にしてドーピングパウダーを使用すれば、もっと強くなる。異世界転生ものにありがちな無双状態も夢ではない。
「まあ、随分と地道な無双への道だけどな」
自分にツッコミを入れながら、逆立ちをしながら歩いていく。
腕力に負荷を掛けるだけでなく、スクワットをしたり腹筋をしたりと随分と健全な無双への道だ。まあ、ドーピングパウダーでブーストしまくっているので、全然健全ではないのだけれど。
モンスターともよく遭遇した。
モンスターの種類は様々だ。ゴブリンなどの妖魔、デカい昆虫、人型の蜥蜴、凶暴な動物……小さな悪魔っぽい魔物とも戦った。
だが、ドーピングパウダーを継続的に使用し鍛えている俺の敵ではない。いつしかもうナイフを使わなくてもワンパンで倒せるようになっていた。
もちろん、ちょっと驚いた敵もいた。
大体の敵は物理攻撃しかしてこないので、攻撃を避ける→パンチで倒せたのだが、悪魔っぽい魔物は火の玉をぶっ放してきたのだ。
まあ、避ける→距離を詰めて攻撃、という動作には変わりないのだけれど、見たことがない攻撃はビビる。どの程度痛いのかもわからないので、当たるわけにもいかないし。
どうやら、この異世界には普通に魔法を使えるモンスターもいるっぽい。となれば、魔法を扱える人間も当然いるのだろう。
魔法耐性を上げる麻薬、魔力を上げる麻薬などもあれば、約に立ちそうだ。
「まー、今は卸先を考えるよりも、まずはどんな人間がいるのか、どんな勢力があるのかを調べてからだよなぁ」
爺さんに色々この地域のことも教えてもらったが、ここはアーガイル王国という比較的大きな国で、俺や爺さんが住んでいる森はその辺境中の辺境。ハバリアという町も田舎にある少し大きめの町に過ぎないらしい。
「まっ、いいんじゃねえの? 辺境地から徐々に力を付けていくってのも悪くねーし」
俺はそう独り言ちて、納得する。
成り上がり譚としても悪くない。万が一色々立場が悪くなったらまた田舎に逃げればいい。少なくとも戸籍やらで色々管理されている日本よりも活動しやすいのは間違いないのだから。
「ただ……仲間は欲しいよなぁ」
調合は俺がするにしても、採取して作って売るを全部ひとりでやるのは正直しんどいものがある。
ちょっと資金が貯まったら仲間を探してみるのもありかもしれない。
「俺が異世界転生してんだから……あいつらも異世界転生してねーかな」
思い返すのは、フランとレクスとメルヴィといった麻薬カルテル〝レガリア〟の立ち上げメンバー達。
もし異世界でも彼らと再会できたら、今度こそあいつらを幸せにしてやりたいものだ。
そうこうして歩いているうちに、ハバリアが見えてきた。
「さて、いっちょやったりますか!」
俺は自らの拳でばしっと手のひらを打ち付けると、気合を入れたのだった。
太陽の傾き的に、おそらく二時間程度だろうか。
本来二時間で筋肉痛が治るわけがないので、あれらの痛みはドーピングパウダーの副作用と思って間違いなさそうだ。
また、効果が高過ぎることから、一個の鉱石で取れる粉末を全部摂取するのも良くない。多分、通常の戦闘で使用する場合は三分の一でも十分だ。もし、一個分丸々使用するのはヤバい強敵と遭遇する時にしていこう。
爺さんの話では、こうして鉱石やら葉っぱを粉末にして使用するという文化はこの世界にはない。
ということは、ハッピーパウダー以外の強化系麻薬も卸せば良い金稼ぎになりそうだ。
「でも……ドーピングパウダーは危険過ぎるな」
先程の肉体強化っぷりはヤバい。あまりに人間の力を越え過ぎている。
これを人間の手に渡すのは危険だ。というか、俺が危険だ。
俺だったら、ドーピングパウダーを摂取して肉体強化をして、売人の持っている粉を全部奪って自分のものにするだろう。
異世界の人間にそんな知能があるのかはわからないが、慎重にことを運んだ方がいいのは間違いない。ドーピングパウダーは自分用にしておこう。
俺は身体を大きく伸びをして、ドーピングパウダーが採れる赤い鉱石がある場所まで戻って、ひらすらに赤い鉱石を調合してドーピングパウダーに変えていく。
異世界は色々便利だ。このスキルが一体何のスキルなのかはわからないが、触れるだけで即麻薬を調合できるなど、まさしく俺向き過ぎる。
せっかく異世界転生したのだから、もっと異世界ちっくなユニークスキルを持ってみたかったとも思うが、場合によってはこの麻薬調合スキルは手に入る麻薬次第で金持ちにも最強にもなれる。ある意味チートだ。
それに、売人としてのノウハウがある俺にとってはもうこれ以上ないとも言える。自分で生成して自分で卸せるとか最強過ぎるあろう。それに、爺さんの話から察する限り、そもそも麻薬という概念がないのだから、当然麻薬取締官もいない。麻薬取締官がいない世界で麻薬を売り捌けるなど、もはややりたい放題だ。最高過ぎる。
ただ、俺がやり過ぎると、もしかすると麻薬取締官に該当するものを国側も生み出して規制を掛けてくるかもしれない。慎重に売っていくのが良いだろう。
「さてと……ドーピングパウダーもいっぱい取れたし、とりあえずこんなものか」
手持ちの瓶がハッピーパウダーとドーピングパウダーで埋まってしまった。
とりあえず、当面はこの二種類で生活していこう。
早速ドーピングパウダーを先程摂取した十分の一程度だけ体内に入れている。
「うん、この分量でも身体が軽くなるし、力も入るな。十分十分」
一回のドーピングパウダーの使用で効果が継続するのは三〇分程度だ。
その間、俺はなるべく体に負荷を掛けるようにして筋トレをしつつ移動し、三〇分経って効果が消えたら再度摂取する、という形を繰り返した。
今この銀髪青年の身体は筋肉も全然なくてひょろいが、こうしてドーピングパウダーを使いながら身体を鍛えていけば、体の基礎筋力が上がる。
通常の状態でドーピングパウダー十分の一くらいの力を発揮できるくらいになれば、それだけでも人間としてはかなり強い部類に入るだろう。人間くらいならドーピングパンチで一発K・Oだ。
これを通常状態にしてドーピングパウダーを使用すれば、もっと強くなる。異世界転生ものにありがちな無双状態も夢ではない。
「まあ、随分と地道な無双への道だけどな」
自分にツッコミを入れながら、逆立ちをしながら歩いていく。
腕力に負荷を掛けるだけでなく、スクワットをしたり腹筋をしたりと随分と健全な無双への道だ。まあ、ドーピングパウダーでブーストしまくっているので、全然健全ではないのだけれど。
モンスターともよく遭遇した。
モンスターの種類は様々だ。ゴブリンなどの妖魔、デカい昆虫、人型の蜥蜴、凶暴な動物……小さな悪魔っぽい魔物とも戦った。
だが、ドーピングパウダーを継続的に使用し鍛えている俺の敵ではない。いつしかもうナイフを使わなくてもワンパンで倒せるようになっていた。
もちろん、ちょっと驚いた敵もいた。
大体の敵は物理攻撃しかしてこないので、攻撃を避ける→パンチで倒せたのだが、悪魔っぽい魔物は火の玉をぶっ放してきたのだ。
まあ、避ける→距離を詰めて攻撃、という動作には変わりないのだけれど、見たことがない攻撃はビビる。どの程度痛いのかもわからないので、当たるわけにもいかないし。
どうやら、この異世界には普通に魔法を使えるモンスターもいるっぽい。となれば、魔法を扱える人間も当然いるのだろう。
魔法耐性を上げる麻薬、魔力を上げる麻薬などもあれば、約に立ちそうだ。
「まー、今は卸先を考えるよりも、まずはどんな人間がいるのか、どんな勢力があるのかを調べてからだよなぁ」
爺さんに色々この地域のことも教えてもらったが、ここはアーガイル王国という比較的大きな国で、俺や爺さんが住んでいる森はその辺境中の辺境。ハバリアという町も田舎にある少し大きめの町に過ぎないらしい。
「まっ、いいんじゃねえの? 辺境地から徐々に力を付けていくってのも悪くねーし」
俺はそう独り言ちて、納得する。
成り上がり譚としても悪くない。万が一色々立場が悪くなったらまた田舎に逃げればいい。少なくとも戸籍やらで色々管理されている日本よりも活動しやすいのは間違いないのだから。
「ただ……仲間は欲しいよなぁ」
調合は俺がするにしても、採取して作って売るを全部ひとりでやるのは正直しんどいものがある。
ちょっと資金が貯まったら仲間を探してみるのもありかもしれない。
「俺が異世界転生してんだから……あいつらも異世界転生してねーかな」
思い返すのは、フランとレクスとメルヴィといった麻薬カルテル〝レガリア〟の立ち上げメンバー達。
もし異世界でも彼らと再会できたら、今度こそあいつらを幸せにしてやりたいものだ。
そうこうして歩いているうちに、ハバリアが見えてきた。
「さて、いっちょやったりますか!」
俺は自らの拳でばしっと手のひらを打ち付けると、気合を入れたのだった。