「それにしても、異世界に来ても麻薬調合スキルって……ほんまボスは麻薬大好き男なんですねー」
メルヴィが呆れたような、どこか感心したような様子で言った。
麻薬大好き男はやめろ。俺はシャブ中毒じゃない。あくまでも作り手側だ。
「どうせなら、俺だって剣とか魔法みたいなスキルがよかったけどねぇ。いかにも異世界って感じだし」
「まあ、そう言わんと。ボスがどこでも麻薬作ってくれる御蔭であちきらはおまんま食べさせてもらってるんですから」
「そーそー。むしろ誇るべきじゃない?」
メルヴィの軽口に、フランが同意した。
いや、だから俺が世の中を乱してるみたいな言い方やめてね?
まあ、実際乱してるとは思うけど、あくまでも需要と供給があるからだから。
「今んところ、どんなヤクがあるんです? さっきの言い分やと、何種類かありそうでしたけど」
「あー、そっか。まだ説明してなかったな。簡単に分けると、今あるのはこの三種類」
俺はケースの中からハッピーパウダー、ドーピングパウダー、アーマーパウダーを取り出して、テーブルの上に並べた。
説明するついでにメルヴィにもプレゼントしておこう。
「ハッピーパウダーはまあ知っての通り、向こうにあったものとほぼ同じ。満腹効果が追加されてるくらいかな? 基本、殆ど同じものと思って間違いない」
「はー! ほんんま同じ色してますねー」
メルヴィはハッピーパウダーが入った小瓶の蓋を開け、鼻を近付けた。
「うわっ。匂いも同じですやん! すご!」
「ねー、マジで凄いよね。私もマジかってなったもん」
愕然とするメルヴィに、うむうむとフランが頷く。
やっぱり俺達を繋いでいるものは結局この粉だったんだなぁと思わされて、ちょっと可笑しくなった。
「ドーピングパウダーはその名の通り、身体の筋肉を飛躍的に上昇させる。ぶっちゃけ、誰でも超人になれるレベル。ただ、その分副作用が結構きついのと、使い過ぎると数時間動けなくなる。まー、これは非売品かな。流通させるにはあまりに危なすぎる」
多分、これは治安を崩壊させる。
使い方をわかっている人間が、必要な時だけ使うものにしたい。
「筋肉強化系の麻薬でっか。筋肉系やとあちきはあんまり使わんやろうなぁ」
「いや、私も使ったからわかるけど、魔力が切れた時でもこれあれば殴って逃げれるよ。脚力も上がるからめっちゃ動き速くなるし、効果切れるまで全力ダッシュすれば多分大抵振り切れると思う」
「あ、そういう使い方もあるんやね」
「なるほどねー!」
フランから説明を受けて、メルヴィと一緒に俺も納得する。
戦って倒すことしか考えてなかったが、さすが異世界では戦士をやっているだけのことはある。勝てない相手からどう生き延びるかについても頭の片隅にあるようだ。
続いてアーマーパウダーの説明も行い、メルヴィにも渡しておいた。
無詠唱スキルで魔法をバンバン撃ちまくれる彼女とアーマーパウダーの相性はめちゃくちゃ良い。もしもの時にも役立つだろう。
ある程度説明を終えたところで、メルヴィが訊いてきた。
「魔力を上げるような麻薬も作れるんですか?」
「ん~、どうなんだろうな。原材料が見つかればって感じかなぁ。一応魔力が籠ってる素材とかが原材料になるっぽいから、もしそういう伝承みたいなものとか情報あれば教えてほしいかな」
「了解です。魔力が籠ってる素材やったら、魔法学校の方に行けばもしかしたらなんか情報あるかもやし、今度一回聞いてみますわ」
「辞めたんじゃないの?」
「辞めましたけど、繋がりある教師はおりますんで、訊くだけ訊いてみますわ。何やったらシャブ漬けにして吐かせますし」
さすが〝レガリア〟の一員。俺とフランと同じく、こいつも完全に倫理観が終わってる。
むしろ俺達の中では褒め言葉だ。
「まあ、そこは持ちつ持たれつですわ。魔法学校の教員かて研究者みたいなもんやから、魔力上げる薬とかあれば絶対欲しがりますし。それ横流しする代わりに情報貰うとか、色々やりようあると思います」
「なるほど、んじゃメルヴィは馬車サービスの仕事に慣れたら魔法学校の方も探り頼むわ」
「任せておくんなまし」
メルヴィが得意げな笑みを浮かべて、頷いた。
うん、頼れる味方がもうひとりできて、心強い。
と言っても、メルヴィは案外ポカもする。ポカ度で言えば、俺やフランよりも高いし、ポカをした時にパニクる傾向もあった。
ポカで思い出したが、交番の前で粉を落してしまった時はマジで心臓が停まるかと思った。幸い警察官が他の人に対応していたから気付かれなかったから良いものを、バレていたらそこで終わっていた。
ポカをやらかすことを除けば組織想いだし、自分から進んで新規開拓をしてくるなど、有能な一面も多い。ポカをしないように俺が上手くサポートしてやらなければならないだろう。
「……とりあえず、衛兵の前でハッピーパウダー落としたりすんのだけはやめてくれよ」
気を引き締めるために、ちくりと釘だけ刺しておく。
「もうそれでいじめんのやめてください! あれ以降そんなヘマしてませんやん!」
顔を真っ赤にして、怒ってくるメルヴィ。
俺とフランはそんな彼女を見て、笑っていた。
まあ、人間だしミスのひとつやふたつはある。誰かがミスをすればカバーしてやればいいし、俺がミスった時は周りにカバーしてもらえばいい。
仲間ってそういうものだと思うのだ。
メルヴィが呆れたような、どこか感心したような様子で言った。
麻薬大好き男はやめろ。俺はシャブ中毒じゃない。あくまでも作り手側だ。
「どうせなら、俺だって剣とか魔法みたいなスキルがよかったけどねぇ。いかにも異世界って感じだし」
「まあ、そう言わんと。ボスがどこでも麻薬作ってくれる御蔭であちきらはおまんま食べさせてもらってるんですから」
「そーそー。むしろ誇るべきじゃない?」
メルヴィの軽口に、フランが同意した。
いや、だから俺が世の中を乱してるみたいな言い方やめてね?
まあ、実際乱してるとは思うけど、あくまでも需要と供給があるからだから。
「今んところ、どんなヤクがあるんです? さっきの言い分やと、何種類かありそうでしたけど」
「あー、そっか。まだ説明してなかったな。簡単に分けると、今あるのはこの三種類」
俺はケースの中からハッピーパウダー、ドーピングパウダー、アーマーパウダーを取り出して、テーブルの上に並べた。
説明するついでにメルヴィにもプレゼントしておこう。
「ハッピーパウダーはまあ知っての通り、向こうにあったものとほぼ同じ。満腹効果が追加されてるくらいかな? 基本、殆ど同じものと思って間違いない」
「はー! ほんんま同じ色してますねー」
メルヴィはハッピーパウダーが入った小瓶の蓋を開け、鼻を近付けた。
「うわっ。匂いも同じですやん! すご!」
「ねー、マジで凄いよね。私もマジかってなったもん」
愕然とするメルヴィに、うむうむとフランが頷く。
やっぱり俺達を繋いでいるものは結局この粉だったんだなぁと思わされて、ちょっと可笑しくなった。
「ドーピングパウダーはその名の通り、身体の筋肉を飛躍的に上昇させる。ぶっちゃけ、誰でも超人になれるレベル。ただ、その分副作用が結構きついのと、使い過ぎると数時間動けなくなる。まー、これは非売品かな。流通させるにはあまりに危なすぎる」
多分、これは治安を崩壊させる。
使い方をわかっている人間が、必要な時だけ使うものにしたい。
「筋肉強化系の麻薬でっか。筋肉系やとあちきはあんまり使わんやろうなぁ」
「いや、私も使ったからわかるけど、魔力が切れた時でもこれあれば殴って逃げれるよ。脚力も上がるからめっちゃ動き速くなるし、効果切れるまで全力ダッシュすれば多分大抵振り切れると思う」
「あ、そういう使い方もあるんやね」
「なるほどねー!」
フランから説明を受けて、メルヴィと一緒に俺も納得する。
戦って倒すことしか考えてなかったが、さすが異世界では戦士をやっているだけのことはある。勝てない相手からどう生き延びるかについても頭の片隅にあるようだ。
続いてアーマーパウダーの説明も行い、メルヴィにも渡しておいた。
無詠唱スキルで魔法をバンバン撃ちまくれる彼女とアーマーパウダーの相性はめちゃくちゃ良い。もしもの時にも役立つだろう。
ある程度説明を終えたところで、メルヴィが訊いてきた。
「魔力を上げるような麻薬も作れるんですか?」
「ん~、どうなんだろうな。原材料が見つかればって感じかなぁ。一応魔力が籠ってる素材とかが原材料になるっぽいから、もしそういう伝承みたいなものとか情報あれば教えてほしいかな」
「了解です。魔力が籠ってる素材やったら、魔法学校の方に行けばもしかしたらなんか情報あるかもやし、今度一回聞いてみますわ」
「辞めたんじゃないの?」
「辞めましたけど、繋がりある教師はおりますんで、訊くだけ訊いてみますわ。何やったらシャブ漬けにして吐かせますし」
さすが〝レガリア〟の一員。俺とフランと同じく、こいつも完全に倫理観が終わってる。
むしろ俺達の中では褒め言葉だ。
「まあ、そこは持ちつ持たれつですわ。魔法学校の教員かて研究者みたいなもんやから、魔力上げる薬とかあれば絶対欲しがりますし。それ横流しする代わりに情報貰うとか、色々やりようあると思います」
「なるほど、んじゃメルヴィは馬車サービスの仕事に慣れたら魔法学校の方も探り頼むわ」
「任せておくんなまし」
メルヴィが得意げな笑みを浮かべて、頷いた。
うん、頼れる味方がもうひとりできて、心強い。
と言っても、メルヴィは案外ポカもする。ポカ度で言えば、俺やフランよりも高いし、ポカをした時にパニクる傾向もあった。
ポカで思い出したが、交番の前で粉を落してしまった時はマジで心臓が停まるかと思った。幸い警察官が他の人に対応していたから気付かれなかったから良いものを、バレていたらそこで終わっていた。
ポカをやらかすことを除けば組織想いだし、自分から進んで新規開拓をしてくるなど、有能な一面も多い。ポカをしないように俺が上手くサポートしてやらなければならないだろう。
「……とりあえず、衛兵の前でハッピーパウダー落としたりすんのだけはやめてくれよ」
気を引き締めるために、ちくりと釘だけ刺しておく。
「もうそれでいじめんのやめてください! あれ以降そんなヘマしてませんやん!」
顔を真っ赤にして、怒ってくるメルヴィ。
俺とフランはそんな彼女を見て、笑っていた。
まあ、人間だしミスのひとつやふたつはある。誰かがミスをすればカバーしてやればいいし、俺がミスった時は周りにカバーしてもらえばいい。
仲間ってそういうものだと思うのだ。