「そういや、メルヴィのスキルって何なの?」
もうひとつ気になっていたことをメルヴィに尋ねてみた。
俺もフランも、異世界転生を果たすとともに日本ではなかったスキルを手にしている。
俺達ふたりが何かしらの特殊スキルを身に付けていたのだとすると、彼女にも何かのスキルがあるのではないかと思った。
「あちきのスキル? 何ですの、それ」
メルヴィは小首を傾げた。
どうやら、彼女にはそのスキルの自覚がないらしい。そういえばフランもスキルという自覚がなかったっけ。
そこで、俺達は自分達のスキルについて軽く説明をした。
俺の麻薬調合スキルは、魔力を持つ特殊な原材料から麻薬を調合するスキル、フランの場合は一撃必殺の剣技スキルだ。
「あー、そういうやつですか。それならあちきにもありまっせ」
メルヴィは言いながら、手のひらを広げると、そこにボッと炎を燈した。
「うぉ」
「魔法だー! すごっ」
いきなり室内が明るくなるくらいの炎を手に燈したので、びっくりしてしまった。
フランはこれまでの記憶で魔法を見たことがあるからそれほどではなかったのかもしれないが、俺にとっては人生初の魔法。驚かないはずがない。
「その魔法がスキルっていうのか?」
無知な俺は重ねて尋ねるが、メルヴィは首を横に振った。
「いえ、ちゃいます。魔法自体は学んだことがある人なら誰でも使えるんですけど──」
「あ、わかった! もしかして、無詠唱で魔法を使えるとか?」
フランがメルヴィの言わんとすることを読み取ったのか、訊いた。
メルヴィは「フランはん、正解」とにやりと笑みを浮かべた。
「本来魔法を使う時って何や詠唱みたいなんをせなあかんのですけど、あちきにはそれが要らんのですわ。心に思い浮かべるだけで魔法を発動できたり、何かに付与できたりするんです。魔法学校でも何やそれが凄いとか言われてたんで、これがその特殊スキル?ってやつやと思います」
「無詠唱スキルか。それってそんな凄いもんなの?」
「何言ってんのボス。めちゃくちゃ凄いって」
メルヴィが答える前に、フランが口を挟んだ。
「普通、魔法を唱える時って色々詠唱しなくちゃいけなくて、その詠唱って結構時間が掛かったりするものなのよ」
「その詠唱と引き換えに強力な魔法を使えるってことか」
「そうそう。その詠唱時間が魔導師の弱点って言われてて、魔導師と一緒に戦う場合はサポートしなきゃいけないっていうのがこっちの戦いの基本なの」
「なるほどな」
要するに、無詠唱スキル=装填時間がやたらと掛かる強力な銃器みたいな感じか。
確かに、それは周りがサポートしてやらないといけないし、その装填時間なくバカスカ撃ちまくれるならめちゃくちゃ強い。
「魔導師って基本戦う時は前衛がいなくちゃいけないんだけど、メルヴィさんはひとりで全部戦えるってことかー。凄いなぁ。最強じゃん」
宿主が魔導師と戦った経験があるのか、フランも色々詳しいようだ。
「まあ、実際そんな大それたもんちゃいますけどね。そんなしょっちゅうドンパチするわけでもありませんし。日常で使うとなると……」
メルヴィは部屋をきょろきょろと見回し、何かを発見したのか「あっ」と顔を輝かせた。彼女は立ち上がって備え付けの食器棚からコップを三つ取り出すと、それに手を翳す。
すると、手が光を放って、その光からコップへと水が注がれていったのだ。
「こんなもんでしょうかね? まあ、飲み水に困ることはありませんしお湯も沸かせますんで、結構便利なんですけどね」
お風呂入りたかったらいつでも言うてください、とメルヴィは困り顔で付け足して俺達の前にコップを並べた。一口飲んでみたが、ちゃんとした水だった。むしろそこいらの汲んだ水より体に良いかもしれない。
「す、すげー! 超便利じゃん! むしろ剣技スキルよりも……」
「ちょ、ボス!? 今遠回しに私のこと使えないって言った!?」
「い、言ってない言ってない!」
慌てて口を噤む。
別にフランのスキルが使えないというわけではない。ただ、メルヴィの言う通り、俺達はそれほど鉄火場に出るわけではないし、俺自身もドーピングパウダーの御蔭でそこそこ戦えることから、今のところはあまり出番がないだけである。俺では勝てないモンスターだったり、或いは麻薬取締官が現れた際に一番頼りになるのはフランの剣技スキルだろう。
ただ、そういった有事が生じない限り、メルヴィのスキルの方が遥かに役に立つ。まあ、これはメルヴィのスキルというより、もともと扱える魔法の技量によるところが大きいのだろうけど。
「いやー……にしても無詠唱スキル、やべーな。チート過ぎるだろ」
「異世界でも日常生活楽しむ分には割と恩恵受けてますからね。他にも暑い時とか寒い時に冷暖房代わりのもん出せたりするんで、電気代わりにはなりますし」
めちゃくちゃ便利だ。
というか、こうして異世界に来てみてわかるけど、電気とかガスとか水道って普通に魔法レベルのことだったんだよなー。
失わないとわからないものは多いものだ。
ただ、何だかフランとメルヴィのスキルはとっても異世界転生っぽいのに、俺だけ麻薬調合スキル……何で?
もうひとつ気になっていたことをメルヴィに尋ねてみた。
俺もフランも、異世界転生を果たすとともに日本ではなかったスキルを手にしている。
俺達ふたりが何かしらの特殊スキルを身に付けていたのだとすると、彼女にも何かのスキルがあるのではないかと思った。
「あちきのスキル? 何ですの、それ」
メルヴィは小首を傾げた。
どうやら、彼女にはそのスキルの自覚がないらしい。そういえばフランもスキルという自覚がなかったっけ。
そこで、俺達は自分達のスキルについて軽く説明をした。
俺の麻薬調合スキルは、魔力を持つ特殊な原材料から麻薬を調合するスキル、フランの場合は一撃必殺の剣技スキルだ。
「あー、そういうやつですか。それならあちきにもありまっせ」
メルヴィは言いながら、手のひらを広げると、そこにボッと炎を燈した。
「うぉ」
「魔法だー! すごっ」
いきなり室内が明るくなるくらいの炎を手に燈したので、びっくりしてしまった。
フランはこれまでの記憶で魔法を見たことがあるからそれほどではなかったのかもしれないが、俺にとっては人生初の魔法。驚かないはずがない。
「その魔法がスキルっていうのか?」
無知な俺は重ねて尋ねるが、メルヴィは首を横に振った。
「いえ、ちゃいます。魔法自体は学んだことがある人なら誰でも使えるんですけど──」
「あ、わかった! もしかして、無詠唱で魔法を使えるとか?」
フランがメルヴィの言わんとすることを読み取ったのか、訊いた。
メルヴィは「フランはん、正解」とにやりと笑みを浮かべた。
「本来魔法を使う時って何や詠唱みたいなんをせなあかんのですけど、あちきにはそれが要らんのですわ。心に思い浮かべるだけで魔法を発動できたり、何かに付与できたりするんです。魔法学校でも何やそれが凄いとか言われてたんで、これがその特殊スキル?ってやつやと思います」
「無詠唱スキルか。それってそんな凄いもんなの?」
「何言ってんのボス。めちゃくちゃ凄いって」
メルヴィが答える前に、フランが口を挟んだ。
「普通、魔法を唱える時って色々詠唱しなくちゃいけなくて、その詠唱って結構時間が掛かったりするものなのよ」
「その詠唱と引き換えに強力な魔法を使えるってことか」
「そうそう。その詠唱時間が魔導師の弱点って言われてて、魔導師と一緒に戦う場合はサポートしなきゃいけないっていうのがこっちの戦いの基本なの」
「なるほどな」
要するに、無詠唱スキル=装填時間がやたらと掛かる強力な銃器みたいな感じか。
確かに、それは周りがサポートしてやらないといけないし、その装填時間なくバカスカ撃ちまくれるならめちゃくちゃ強い。
「魔導師って基本戦う時は前衛がいなくちゃいけないんだけど、メルヴィさんはひとりで全部戦えるってことかー。凄いなぁ。最強じゃん」
宿主が魔導師と戦った経験があるのか、フランも色々詳しいようだ。
「まあ、実際そんな大それたもんちゃいますけどね。そんなしょっちゅうドンパチするわけでもありませんし。日常で使うとなると……」
メルヴィは部屋をきょろきょろと見回し、何かを発見したのか「あっ」と顔を輝かせた。彼女は立ち上がって備え付けの食器棚からコップを三つ取り出すと、それに手を翳す。
すると、手が光を放って、その光からコップへと水が注がれていったのだ。
「こんなもんでしょうかね? まあ、飲み水に困ることはありませんしお湯も沸かせますんで、結構便利なんですけどね」
お風呂入りたかったらいつでも言うてください、とメルヴィは困り顔で付け足して俺達の前にコップを並べた。一口飲んでみたが、ちゃんとした水だった。むしろそこいらの汲んだ水より体に良いかもしれない。
「す、すげー! 超便利じゃん! むしろ剣技スキルよりも……」
「ちょ、ボス!? 今遠回しに私のこと使えないって言った!?」
「い、言ってない言ってない!」
慌てて口を噤む。
別にフランのスキルが使えないというわけではない。ただ、メルヴィの言う通り、俺達はそれほど鉄火場に出るわけではないし、俺自身もドーピングパウダーの御蔭でそこそこ戦えることから、今のところはあまり出番がないだけである。俺では勝てないモンスターだったり、或いは麻薬取締官が現れた際に一番頼りになるのはフランの剣技スキルだろう。
ただ、そういった有事が生じない限り、メルヴィのスキルの方が遥かに役に立つ。まあ、これはメルヴィのスキルというより、もともと扱える魔法の技量によるところが大きいのだろうけど。
「いやー……にしても無詠唱スキル、やべーな。チート過ぎるだろ」
「異世界でも日常生活楽しむ分には割と恩恵受けてますからね。他にも暑い時とか寒い時に冷暖房代わりのもん出せたりするんで、電気代わりにはなりますし」
めちゃくちゃ便利だ。
というか、こうして異世界に来てみてわかるけど、電気とかガスとか水道って普通に魔法レベルのことだったんだよなー。
失わないとわからないものは多いものだ。
ただ、何だかフランとメルヴィのスキルはとっても異世界転生っぽいのに、俺だけ麻薬調合スキル……何で?