離れていく背中に手を振った。
1人で歩いていく心の準備をして、くるりと体を進むべき方向へ向けた。

何も無くなった道の先が、陽炎でゆらゆらと揺れている。

その中に1人の少女が立っていた。

暑さで見せた幻影だと分かる。


足を止めた。

恐怖心はなかった。


こちらを振り返った少女。


「広菜!」



名前を呼べば、彼女はこちらに笑って手を振った。
さよならを言いにきたのだと思った。


「また手紙書くね!」


そういうと、広菜は大きく頷いた。

そして、陽炎とともに静かに消えていった。






【陽炎を狩る】


end