「っ」
手紙を握りしめた。
「やるべきことをやる」その決意は、カヨラのやっていることを告発するという広菜の正義だった。
泣いたって、どんなに叫んだって広菜は帰ってこないことは分かっている。
なぜ相談をしてくれなかったんだろう、なぜ、一緒に戦わせてくれなかったんだろう。
陽炎をこわがっていた広菜は、カヨラという悪の渦に巻き込まれることは耐え難い恐怖だったに違いないのに。
手を、離してしまった。
過去の私は、何かに気づいていたのに逃げていたんだろうか。まわる噂を気にして、隣にいることをやめた可能性だってある。
「ごめん、ごめんなさい」
私は何度も1枚の手紙を前に謝った。そんなことをしても広菜は帰ってこないのに。
縋るように泣きついて、私はもう一つの恐怖を視界に入れる。
最後に、私が広菜にあてた手紙だ。
きっと、何も気づかなかった、逃げていた後悔と、懺悔を綴っているのだろう。
土のついた手を払うことなく、私はそれに手を伸ばす。
つらい、もう知りたくない。
だって、どんなに正義を語ったって、それは広菜を助けられなかった言い訳にすぎない。
でも、まだカヨラの闇は闇のままとどまっていて、広菜がやろうとしていたことを最後までやりきるには、ここを乗り越えるしかないんだ。
手紙を手に取り、開いた。
ーーー広菜へ
あなたは自殺した。けど、私はカヨラに殺されたんだと思ってる。
広菜がいなくなって、もう何も考えたくなくて、私も一緒にそっちに行きたくなる。
一緒に戦おうって言ったじゃない。
カヨラは、最低最悪の組織。
広菜が通っていた病院にもいった。
まんまとカヨラのパンフレットを渡してきて、私はカヨラに入ったの。
もちろん、すべてを調べて、広菜ができなかったことを成し遂げるために。
でも、カヨラの中の人で、同じような気持ちを持っている人もいた。
広菜と仲良かったんだね。
託していたものを、受け取ったよ。
私はあなたの残したものを無駄にしない。
でもその前に、広菜を闇に落とした人に復讐してやる。
みていてね、大好きな親友。
陽炎を狩るのは、その後にします。
ーーーー萌香