「いやいや、あんな家、魔物にとっては障害にならない。俺の他にも沢山の騎士が警戒に出ているから、彼らに頼もう」
「分かった」
今は森を抜けることが先決。ジークを先頭に四人は歩き始めた。
幾度かジークが剣を構えるも場面もあったけれど、無事森を抜け見晴らしが良くなったところで全員がホッと息を吐いた。
前後左右、頭上と気を張り詰めていたけれどここなら不意打ちは不可能。
一角兎を一撃で仕留めたジークがいるのだから、正面きっての攻撃ならきっと防げると皆が思っていた。
刹那、先ほどまで降り注いでいた日差しが突如影る。
雨雲? と見るも前半の草むらは太陽の光を受け青々としている、おかしい。
ミオ達の周りだけに落ちた大きな影。
次の瞬間、ジークの叫び声が耳をつん裂いた。
「逃げろ!! 体力の限り走り続けろ!!」
同時に聞こえるのは身体を震わす咆哮。
揺れる空気がミオの髪を掻き乱す。
グワアアァァ、ギギャー
見上げたその先には、視界に収まらないほど大きいドラゴン。その片翼だけでも五メートルはありそうだ。赤黒い表皮は鱗で覆われ、尻尾だけでもゆうに家を薙ぎ払うだろう。
バサ、バサ、と二度翼がはためくと信じられないほどの突風が全身を襲った。
「きゃあ!!」
「助けて!」
ミオとサザリンは叫び、ベニーに至ってはサザリンの胸にしがみつき声すら出せない。
風圧で身体が宙に浮き、数メートル先の地面に叩きつけられる。
ジークだけはその風圧を堪えたようで、三人を背に庇い剣を握ってドラゴンと対峙する。
今、ここにいる騎士はジークだけ。
やるべきことは一つ。
しかし、三十倍以上もの体格差に到底勝ち目があるとは思えない。
「ミオ、俺がドラゴンを引きつけるからその隙に逃げろ。走って、走って、助けを呼べ」
「そんな、ジークはどうするの。ドラゴンは騎士三十人がかりだった言ってたじゃない」
ジークは剣を持つ手に力を込める。
脳裏に蘇るのは母を失った日。
なすすべもなく、ひたすら走って逃げた子供の自分。
「俺はもう目の前で誰も死んでほしくないんだ」
だから騎士になった。守って貰ったから。今度は守るために。
「ジー……」
「早くい……」
ジークの叫び声は、しかし最後まで続かなかった。
突如頭上から炎が吹き付けられる。ドラゴンが吐いた炎は普通の火よりずっとずっと熱い。
「分かった」
今は森を抜けることが先決。ジークを先頭に四人は歩き始めた。
幾度かジークが剣を構えるも場面もあったけれど、無事森を抜け見晴らしが良くなったところで全員がホッと息を吐いた。
前後左右、頭上と気を張り詰めていたけれどここなら不意打ちは不可能。
一角兎を一撃で仕留めたジークがいるのだから、正面きっての攻撃ならきっと防げると皆が思っていた。
刹那、先ほどまで降り注いでいた日差しが突如影る。
雨雲? と見るも前半の草むらは太陽の光を受け青々としている、おかしい。
ミオ達の周りだけに落ちた大きな影。
次の瞬間、ジークの叫び声が耳をつん裂いた。
「逃げろ!! 体力の限り走り続けろ!!」
同時に聞こえるのは身体を震わす咆哮。
揺れる空気がミオの髪を掻き乱す。
グワアアァァ、ギギャー
見上げたその先には、視界に収まらないほど大きいドラゴン。その片翼だけでも五メートルはありそうだ。赤黒い表皮は鱗で覆われ、尻尾だけでもゆうに家を薙ぎ払うだろう。
バサ、バサ、と二度翼がはためくと信じられないほどの突風が全身を襲った。
「きゃあ!!」
「助けて!」
ミオとサザリンは叫び、ベニーに至ってはサザリンの胸にしがみつき声すら出せない。
風圧で身体が宙に浮き、数メートル先の地面に叩きつけられる。
ジークだけはその風圧を堪えたようで、三人を背に庇い剣を握ってドラゴンと対峙する。
今、ここにいる騎士はジークだけ。
やるべきことは一つ。
しかし、三十倍以上もの体格差に到底勝ち目があるとは思えない。
「ミオ、俺がドラゴンを引きつけるからその隙に逃げろ。走って、走って、助けを呼べ」
「そんな、ジークはどうするの。ドラゴンは騎士三十人がかりだった言ってたじゃない」
ジークは剣を持つ手に力を込める。
脳裏に蘇るのは母を失った日。
なすすべもなく、ひたすら走って逃げた子供の自分。
「俺はもう目の前で誰も死んでほしくないんだ」
だから騎士になった。守って貰ったから。今度は守るために。
「ジー……」
「早くい……」
ジークの叫び声は、しかし最後まで続かなかった。
突如頭上から炎が吹き付けられる。ドラゴンが吐いた炎は普通の火よりずっとずっと熱い。



