喉から肩、腰へと斜めに剣を振り落とし、完全に背後に回ったところで手首を捻り腰の辺りに拳を深く差し込む。
ギャッ――!!
耳を切りさくような悲鳴がこだまし、二メートルの巨体がドサリとその場に倒れ伏した。
それは一瞬のことだった。
「ジーク!!」
へなへなとへたり込んだまま名を呼べば、間に伏せる死骸を軽く飛び越えジークが駆け寄ってくる。
「大丈夫か、怪我は?」
「へーき。少し腰が抜けたぐらいよ」
込み上げる安堵から半泣きと強がりで答えた瞬間。
ぎゅっと抱きしめられミオの身体と思考は固まった。
「良かった。あいつが口を開けたのを見たときは心底肝が冷えた」
なおもぎゅっと抱きしめられ、ジークの肩越しにサザリンが頬を赤らめあらぬ方を向いているのが見えた。自覚はないがミオの顔はそれより赤い。
「ジーク、どうしてここに?」
恥ずかしさから少し肩を押せば、ジークはハッとした顔をし慌て腕をほどく。でも、その手は完全には離れず、ミオの肩に触れたまま。触れる手のひらの温もりから、どれほど心配してくれたかが伝わってくる。
「国境向こうの山からドラゴンの咆哮が聞こえた。距離はあるが、あの雄叫びを聞いた魔物が国境を超え村や町まで逃げて来る可能性がある。隊長含めベテラン勢が国境を守り、若手は今周囲の警戒に当たっている。俺はミオのもとに行くように言われ、店の前に置かれたメモを見てここへ来た。遅くなってすまない」
「ううん、来てくれてよかった。ジークは私の命の恩人だよ」
その言葉にジークは瞠目し次いで照れくさそうに、でも嬉しそうな笑みを浮かべた。
「俺は昔、命を助けられた。今度は自分が助ける側になりたくて剣を取った。ミオの命の恩人になれたのなら光栄だ」
こんな時なのにジークの言葉が甘く耳に響いてしまう。
ミオは自分の不謹慎さを恥じながら、でも自然頬が緩んだ。
「兎に角、ここを離れよう。死角が多すぎて危険だ」
ジークが差し出した手につかまり立ち上がると、サザリンとベニーがここにいる理由をかいつまんで説明した。
「ジーク、二人を町まで送って行くことはできる?」
町なら衛兵もいるし、国境から多少なりとも距離がある。魔物にしてみれば大した距離じゃないかもしれないけれど、少しはましだろう。
「そうなるとミオが一人になる」
「家に鍵をかけて閉じ籠るから大丈夫よ」
ギャッ――!!
耳を切りさくような悲鳴がこだまし、二メートルの巨体がドサリとその場に倒れ伏した。
それは一瞬のことだった。
「ジーク!!」
へなへなとへたり込んだまま名を呼べば、間に伏せる死骸を軽く飛び越えジークが駆け寄ってくる。
「大丈夫か、怪我は?」
「へーき。少し腰が抜けたぐらいよ」
込み上げる安堵から半泣きと強がりで答えた瞬間。
ぎゅっと抱きしめられミオの身体と思考は固まった。
「良かった。あいつが口を開けたのを見たときは心底肝が冷えた」
なおもぎゅっと抱きしめられ、ジークの肩越しにサザリンが頬を赤らめあらぬ方を向いているのが見えた。自覚はないがミオの顔はそれより赤い。
「ジーク、どうしてここに?」
恥ずかしさから少し肩を押せば、ジークはハッとした顔をし慌て腕をほどく。でも、その手は完全には離れず、ミオの肩に触れたまま。触れる手のひらの温もりから、どれほど心配してくれたかが伝わってくる。
「国境向こうの山からドラゴンの咆哮が聞こえた。距離はあるが、あの雄叫びを聞いた魔物が国境を超え村や町まで逃げて来る可能性がある。隊長含めベテラン勢が国境を守り、若手は今周囲の警戒に当たっている。俺はミオのもとに行くように言われ、店の前に置かれたメモを見てここへ来た。遅くなってすまない」
「ううん、来てくれてよかった。ジークは私の命の恩人だよ」
その言葉にジークは瞠目し次いで照れくさそうに、でも嬉しそうな笑みを浮かべた。
「俺は昔、命を助けられた。今度は自分が助ける側になりたくて剣を取った。ミオの命の恩人になれたのなら光栄だ」
こんな時なのにジークの言葉が甘く耳に響いてしまう。
ミオは自分の不謹慎さを恥じながら、でも自然頬が緩んだ。
「兎に角、ここを離れよう。死角が多すぎて危険だ」
ジークが差し出した手につかまり立ち上がると、サザリンとベニーがここにいる理由をかいつまんで説明した。
「ジーク、二人を町まで送って行くことはできる?」
町なら衛兵もいるし、国境から多少なりとも距離がある。魔物にしてみれば大した距離じゃないかもしれないけれど、少しはましだろう。
「そうなるとミオが一人になる」
「家に鍵をかけて閉じ籠るから大丈夫よ」



