異世界ハーブ店、始めました。〜ハーブの効き目が規格外なのは、気のせいでしょうか〜

 料理に使われることも多いハーブだから、知らず口にすることもある。しかし少量口にしたからといってすぐに流産するほどの即効性の毒はない。もともとハーブは体質を改善するように緩やかに作用するものなのだ。
「元領主の奥様は気に入って日に数杯飲んでいたとか。それならおそらく流産の原因はセージだと思うわ。当時の『神のきまぐれ』にはハーブの知識がなかったから知らず勧めてしまったのね」
 もし「神のきまぐれ」が息子でなく娘だったら、母はその危険性を将来のため教えていたかもしれない。でも、ハーブにそれほど興味がなさそうな息子には何も伝えなかったのだろう。それもまた仕方ないことだ。
「もちろん、妊婦さん以外の方に害はないから安心して飲んで。敢えて言うなら、記憶力を上げる効果があるとか」
「よかったわね、ドイル。あなたに丁度良いじゃない」
「お前もな」
 二人は匂いを嗅いで、少し顔を顰めながら口に含む。そのあと、うん、と軽く頷いた。
「さっきのラズベリーリーフに比べると飲みにくいけれど、飲んだ後は爽やかですっきりするわ」
「なるほど、ハーブと一口に言ってもここまで味が違ってくるものなんだな」
「ブレンドによってはもっと味が変わってきますよ」
 味の濃い料理を食べた後にセージのハーブはぴったりだ。不運が重なった不幸な出来事と言えてしまうのは他人だからだろう。領主も妻もそして男もどれだけ苦しみ悲しんだことか。それでもハーブを根絶やしにしなかったことは感謝すべきだと思う。
「妊娠中の奥様がハーブティを飲んでいたんだもの、怒鳴って当たり前だわ」
「せめて私が一緒に行ってあげてればよかったわ」
「そんな、リズを巻き込むなんてできないよ」
 眉を下げ心配そうな視線を向けてくるリズに、ミオは大丈夫だと笑って見せる。
 怒鳴られた瞬間は訳が分からずただひたすら驚き怖かったけれど、理由を知った今は納得もできる。そして誤解があるなら解きたいと思う。セージのように妊娠中に口にしてはいけないハーブは多い。でも、ラズベリーリーフのように「安産のためのハーブ」と言われるハーブだってあるのだ。
「ドイル、騎士隊長のあなたなら領主と話す機会はあるんじゃない?」