ミオがゆっくり食事を堪能するのに対し、二人の食欲は旺盛だ。思えばリズと一緒に食事をしたのはこれが初めて。実に美味しそうに豪快に食べる。
(ドイル隊長といる時のリズは素って感じよね)
この二人には気心が知れ合う以上の繋がりを感じる。
あっという間に料理はなくなり、唯一残ったバゲットにミオが即席で作ったスクランブルエッグや、ベーコンを乗せ、つまみとして酒を飲むことに。
「ところでミオはどうして町へ?」
ドイルの質問にミオは困ったように眉を下げると、今日あったことを話した。それを聞いたドイルはうーんと腕を組む。
「仕方ないです、突然現れたハーブカフェを怪しむ人が今までいなかったのが不思議なぐらいですから」
「いや、それはミオが作るハーブティがうまく、効能もあるからだろう。それにそもそも領主がハーブティを嫌っている理由はミオにあるんじゃない」
「ドイル、何か知っているの?」
リズの問いにドイルは持っていたエールの入ったグラスをテーブルに置き、うーんと腕組みする。
「実はミオのハーブカフェが騎士団で話題になったころ、俺のもとに来た奴がいるんだ。そいつはこの町の出身で親は代々領主の護衛をしていたらしい。そいつから聞いた話なのでどれほど信憑性があるかは分からないが……」
そう前置きしたあとドイルは話し始めた。
*
今から数百年前、未曾有の飢饉に領民が苦しんでいた頃。
町の東側を流れる川の上流に、ある日突然一人の男と一軒の家が現れた。
男はこの国の言葉を話せこそすれ、全くこの国の知識を持っていない。違う国から突然ここに来たという彼に対し、村の老人が『神のきまぐれ』だと騒ぎ出した。なんでも数百年前に隣の隣の村に現れたことがあるらしい。
村人達がこれはどういうことかと騒ぐ中、男は村の現状を見てすぐさま家から幾つもの苗や種を持ってきて、川岸に植え始めた。そして数日後、男の家の周りには沢山の小麦や野菜が実った。
これには村人はもちろん男自身も驚き、唖然としながら畑を眺めた。
しかしすぐに気を取り直し、できた小麦や野菜を少し残し村中に配り歩いた。残した野菜からは種を取り出し、今度は前回以上の種を撒き、山ほどの作物が実った。それを繰り返すこと一か月後、飢えの危機は過ぎ去った。
(ドイル隊長といる時のリズは素って感じよね)
この二人には気心が知れ合う以上の繋がりを感じる。
あっという間に料理はなくなり、唯一残ったバゲットにミオが即席で作ったスクランブルエッグや、ベーコンを乗せ、つまみとして酒を飲むことに。
「ところでミオはどうして町へ?」
ドイルの質問にミオは困ったように眉を下げると、今日あったことを話した。それを聞いたドイルはうーんと腕を組む。
「仕方ないです、突然現れたハーブカフェを怪しむ人が今までいなかったのが不思議なぐらいですから」
「いや、それはミオが作るハーブティがうまく、効能もあるからだろう。それにそもそも領主がハーブティを嫌っている理由はミオにあるんじゃない」
「ドイル、何か知っているの?」
リズの問いにドイルは持っていたエールの入ったグラスをテーブルに置き、うーんと腕組みする。
「実はミオのハーブカフェが騎士団で話題になったころ、俺のもとに来た奴がいるんだ。そいつはこの町の出身で親は代々領主の護衛をしていたらしい。そいつから聞いた話なのでどれほど信憑性があるかは分からないが……」
そう前置きしたあとドイルは話し始めた。
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今から数百年前、未曾有の飢饉に領民が苦しんでいた頃。
町の東側を流れる川の上流に、ある日突然一人の男と一軒の家が現れた。
男はこの国の言葉を話せこそすれ、全くこの国の知識を持っていない。違う国から突然ここに来たという彼に対し、村の老人が『神のきまぐれ』だと騒ぎ出した。なんでも数百年前に隣の隣の村に現れたことがあるらしい。
村人達がこれはどういうことかと騒ぐ中、男は村の現状を見てすぐさま家から幾つもの苗や種を持ってきて、川岸に植え始めた。そして数日後、男の家の周りには沢山の小麦や野菜が実った。
これには村人はもちろん男自身も驚き、唖然としながら畑を眺めた。
しかしすぐに気を取り直し、できた小麦や野菜を少し残し村中に配り歩いた。残した野菜からは種を取り出し、今度は前回以上の種を撒き、山ほどの作物が実った。それを繰り返すこと一か月後、飢えの危機は過ぎ去った。