「あまり飛ばすとミオが怖がる、ゆっくりでいい。ミオ、薬が残り少なくなればまた注文する」
「はい、その時は効果がどれほどあったかも教えてください」
ミオがペコリと頭を下げると、ドイルは片手をあげた。
馬の乗り心地は思ったほど悪くない。しかし彫刻のような顔がそこにあるのが役得であり落ち着かない。
(この年で恋愛経験ほぼなしだものね)
無理ないか、と思う。とりあえず後ろは気にしないように目線を前に向けていると、まもなく森に差し掛かった。
「ジーク、少しこの森の中を見たいのだけれど時間はあるかしら」
「それは、森の中に入るっていうこと?」
「そんなに奥までは行かないわ。道から数メートル入ったところまででいいのだけれど」
ミオの問いにジークがうーん、と口をへの字にする。
あっさり、いいよ、と言われると思っていたミオは意外そうに目をパチリとした。
「駄目、なの?」
「この辺りの土地は全て領主様のものなんだ。大抵の森は、領主様の好意で誰でも入っていいことになっているけれど、この森は駄目なんだ」
何か理由があるのかも知れないけれど、ジークもそこまでは知らない。
無論入っては駄目といっても監視がいるわけではないので、こっそり入ることは可能なのだが。
「国境が近いせいかこの森にはごく稀に魔物が出る。うまく国境をすり抜けたヤツとか空を飛ぶヤツとかね、だから中に入るのは止めた方かいい。念のため、辻馬車にもこの森は速度を上げて通り抜けるように伝えている」
だから速度が上がったのかと納得する。しかし、森はすぐそこ、ハーブの存在は是非とも確かめたいところ。
「じゃ、森の近くを少しスピードを落として進むことはできない? 実は来るとき、この森でハーブらしきものを見かけたから確かめたいの」
「なるほど、そういう理由か。分かったそれならいいよ」
ジークは馬を森に近づけスピードを落とす。手を伸ばせば枝や葉に届きそうな距離だ。
手前は森への侵入を防ぐようにぎっしりと木々が生い茂っているけれど、奥の方は日が差し混んでいて明るい場所が幾つかあった。
「あっ、あれ!! ジーク止まって」
一メートルほど離れた場所に、枝にクリーム色の花を咲かせた木が数本立っている。風が少し甘い匂いを運んできた。
「あったのか?」
「ええ。あの花の咲いている木、あれはリンデンっていうハーブよ」
「はい、その時は効果がどれほどあったかも教えてください」
ミオがペコリと頭を下げると、ドイルは片手をあげた。
馬の乗り心地は思ったほど悪くない。しかし彫刻のような顔がそこにあるのが役得であり落ち着かない。
(この年で恋愛経験ほぼなしだものね)
無理ないか、と思う。とりあえず後ろは気にしないように目線を前に向けていると、まもなく森に差し掛かった。
「ジーク、少しこの森の中を見たいのだけれど時間はあるかしら」
「それは、森の中に入るっていうこと?」
「そんなに奥までは行かないわ。道から数メートル入ったところまででいいのだけれど」
ミオの問いにジークがうーん、と口をへの字にする。
あっさり、いいよ、と言われると思っていたミオは意外そうに目をパチリとした。
「駄目、なの?」
「この辺りの土地は全て領主様のものなんだ。大抵の森は、領主様の好意で誰でも入っていいことになっているけれど、この森は駄目なんだ」
何か理由があるのかも知れないけれど、ジークもそこまでは知らない。
無論入っては駄目といっても監視がいるわけではないので、こっそり入ることは可能なのだが。
「国境が近いせいかこの森にはごく稀に魔物が出る。うまく国境をすり抜けたヤツとか空を飛ぶヤツとかね、だから中に入るのは止めた方かいい。念のため、辻馬車にもこの森は速度を上げて通り抜けるように伝えている」
だから速度が上がったのかと納得する。しかし、森はすぐそこ、ハーブの存在は是非とも確かめたいところ。
「じゃ、森の近くを少しスピードを落として進むことはできない? 実は来るとき、この森でハーブらしきものを見かけたから確かめたいの」
「なるほど、そういう理由か。分かったそれならいいよ」
ジークは馬を森に近づけスピードを落とす。手を伸ばせば枝や葉に届きそうな距離だ。
手前は森への侵入を防ぐようにぎっしりと木々が生い茂っているけれど、奥の方は日が差し混んでいて明るい場所が幾つかあった。
「あっ、あれ!! ジーク止まって」
一メートルほど離れた場所に、枝にクリーム色の花を咲かせた木が数本立っている。風が少し甘い匂いを運んできた。
「あったのか?」
「ええ。あの花の咲いている木、あれはリンデンっていうハーブよ」