「おいおい、随分可愛い子と一緒じゃないか。そういえば最近よく出かけているけれど、そうか、そうか、そういうことか」
「いや、違う」
「どう見ても違わないだろう」
 ねっ! と笑いかけられ、ミオは慌てて首を振る。
「ジークは私のお店のお客様で、今日は買い出しに付き合ってもらったんです。それだけです」
「……」
 ミオとしては、私なんかと誤解されてはとキッパリ否定したのだが、ジークはしょっぱい顔で肩を落とした。それを見てエドがジークの肩をポンポンと面白そうに叩く。
「まあまあ、そこら辺の話は食べながら聞くよ。えーと、名前は?」
「ミオです」
「ミオちゃんも一緒に食べよう。さっさ、こっちこっち」
 エドは嫌がるジークの首に腕を回し、半ば引っ張るように二人をドイル隊長の待つテーブルへと案内した。さらに、ささっと椅子をひき、自分の向かい側にミオを座らせる。ジークはそれを横目に渋々ミオの隣に腰を下ろした。
「あれ、貴女は、もしかして」
 斜め向かいのドイルがミオの顔をじっと見る。
「お久しぶりです。今日はヤロウ軟膏の材料を買うのをジークに手伝って貰いました」
「やっぱり『神の気まぐれ』だったか。不躾な頼みをして申し訳ない。ジークから怪我があっという間に癒えたと聞き是非医務室に置ければと、無理を承知で依頼させてもらった」
「うまく作れるか分かりませんがやってみます。それから私のことはミオと呼んでください」
 エドが二人のやり取りを聞きながら目を丸くする。
 どういうことか説明しろと言わんばかりに、ジークに向かって口をぱくぱくと動かすも、ジークは分かりやすくそれを無視した。
「とにかく、いろいろ世話になっている。部下の命を助けてくれたお礼をしたいと思っていたんだ。好きなものを頼んでくれ」
 ドイルがメニューらしきものをミオに渡すも、そこに書かれた文字が何なのか分からない。
「ドイル隊長、ミオはこっちの文字にまだ慣れていないんです。ミオ、食べれないものはある?」
「多分だいたい大丈夫だと思う」
 原型を留めていなければ、と心の中で付け足す。
(今まで疑うことなくお肉を食べていたけれど、あれは何のお肉だったのかな)
 野菜が知っている物ばかりだから、肉も牛や豚、鳥だと思い込んでいたけれど、辻馬車を引く馬の力強さはミオが知るものではなかった。