むぐっと言葉を飲み込んでみれば、店先に出されたテーブルに透明な瓶がいくつか並んでいる。
 薬を入れるにしては少々大きいも、飾り彫りがされていて可愛い。
 ミオはジークの返事を聞くより早く、店先を除きこむ。花瓶やグラスといったガラス製品の他に大小さまざまな缶も置いていた。
 二人が店に入ると「いらっしゃいませ」と年配の女性が声をかけてきた。
 棚に置かれた品をちらちら見ながら、缶の置いてある棚の前で立ち止まる。大きさも色も形も違う缶が棚に奇麗に積み重ねられていて、その中の一つに手を伸ばし持ってみれば、思っていたよりもずっと重かった。
 それもそのはず、ミオがよく手にしていたのは軽いアルミ缶、対してこれはブリキ素材。
 ミオの祖母時代にはよく使われていた素材のせいだろうか、レトロな風合いが可愛く見える。
「騎士が携帯するなら小さな缶が良いと思うけれど、医務室に置くならある程度大きい方がいいかしら」
「そうだな、とりあえず効果を見たいからまずは医務室に置く大きさを。携帯することになれば、自分達で入れ物を用意することになるだろう」
 ミオは直径八センチ、厚さ五センチほどの缶を手にする。
「これで一か月分はある?」
「まさか、騎士に傷は付き物。平時でもって五日、魔物退治があれば一度で二缶は無くなると思う」
 平時でも怪我をするのは訓練をしているかららしい。生傷は絶えないとか。
 それなら十個ほど作って、残り少なくなったら使い終わった空き缶を持ってきてもらって補充する方法が効率よさそう。
「取り合えず十個買おうかな。足りなければまた買いにくればいいし」
 もし余るようなら、それはそれでドライハーブを入れてミオが使えばよいこと。
 大きさが決まったなら次は柄選びだ。花や小鳥、蔦模様とレトロ感ましましな柄がずらりと並ぶ。
 こうなると、自然とテンションも上がる。
「ねえ、この柄可愛いと思わない? あっ、こっちも素敵。これもそれも……どうしよう、迷ってしまう。ねぇジークはどれがいい?」
 楽しそうに缶を幾つも持つミオに問われ、ジークは苦笑いを浮かべる。
「使うのはむさ苦しい騎士達だから、正直柄なんて見ないと思うよ」
「……そうか、そうよね」
 無骨な手で蓋を開け、使い終われば乱暴に箱に投げ入れられる。すぐに凹み傷だらけだ。