開店時間は八時、これまでのハーブティーとパンのセットに小銀貨二枚でハムやソーセージを追加できるようにした。ランチは女性客に合わせ、野菜とお肉の香草焼きにパンとスープをつけたワンプレート、それに好みのハーブティーを選んで貰う。
 もちろんハーブティー単品での注文もできる。
 あれから色々試したところ、ミオが心で願うとハーブティーが輝くことが分かった。
 ハーブには様々な効能がある。むやみやたらに願って薬を越える効果を持ってしまったものを、健康な人に飲ませるのはそれはそれで問題。そこで、酔いどれに出すハーブ以外は、願うことなく淡々と作るように心掛けている。
 さて、そんな日々が続くとある夕方。
 リズを送り出して少しすると、カラリとドアベルが鳴りジークが入ってきた。
(あれから何故か懐かれているのよね)
 ジークの仕事は早朝、日勤、夜勤のローテーションで月に二、三回休みがある。早朝勤務の日は仕事が終わって一眠りした後は決まってミオのお店に来るように。
「じゃ、俺は二階に行ってくる」
 そして人懐っこい笑顔でお決まりのように二階へ。
 何をするかといえば、整理整頓、掃除、時には雑巾かけ。女子力、は語弊があるか。人としての生存活動力に極めて乏しいミオは、放っておけば平気で夕飯を抜くし、着た服はすぐに積み重なる。
 ジークは肉や野菜を持ってきては、ミオの身の回りの世話をしてくれるようになった。初めは遠慮していたけれど、その家事力の高さにすっかり心を奪われ、今はお任せすることに。
 ジーク曰く、命の恩人のあまりの生活力のなさに心配になったらしい。せめてものお礼にと、持ってきて貰った食材と店にあるもので夕食をご馳走することにしている。
 普段は、片付けやパンの仕込みをしながら余った食材を摘み、三食を終わらせることも珍しくない。ミオにとってもきちんとした食事を摂る良い機会でもある。
「今日持ってきてくれたのは、ブロッコリーにジャガイモ、ニンジン。冷蔵庫にはソーセージとお昼の残りの香草焼き」
 何を作ろうかな、と思っているとリズがくれた白ワインの瓶が目に入った。飲みかけだけれど美味しかったから、と分けてくれたお酒だ。