「若く見えるけれど、騎士には幾つからなれるの?」
「十八からです。初めの二年は騎士見習いで、今年騎士になったばかりです」
 予想より若く、まさかの十代。
 そりゃ、回復も早いわ、とミオは筋肉痛の体で思う。男一人に肩を貸し森から歩くのはそれなりに重労働で、朝から身体中が痛いのだ。
「そういえばミオは幾つなの?」
 さらりと聞かれ、ミオは手を止める。
 今聞くか、とジト目で見るもリズは首を傾げる。
「私より年下よね」
「リズって何歳?」
「二十二歳よ」
 危うく生卵を握り潰しそうになる。若い。自分とさほど変わらないかと思っていたのに。そうか、二十二歳か。老けてないか?
「……十歳」
「えっ?」
「だから、三十歳よ」
 不貞腐れ答えれば、ジークが素直に固まった。素直すぎるのも問題だ。失礼な、女は年齢じゃないんだぞ。
 リズはちょっと首を傾げたあと、そうだ、と何かを思い出したように、ぽんと手を打つ。
「それはミオの世界での歳よね。だとしたら……」
 そのタイミングでカラリとドアベルがなった。
 ミオは話途中でごめんね、と言い入り口へ向かうと今朝一番の客を席へ案内する。
 それを見ながら、ジークがリズに話の続きを促した。
「さっきの話ですが、ミオさんの世界とこっちでは歳の数え方が違うのですか?」
「うーん、おばあちゃんの話では一年の日数が違うとか」
「じゃ、こっちだとミオさんは幾つになるんですか? リズさんと変わらないように見えるんですけれど」
 丸い目に、どちらかといえば丸顔のミオは実年齢よりも若く見える。さらに異世界では歳の数え方が違うので、ジークやリズから見ればミオは十代に見えていた。
 それが三十歳だというのだから、信じられないと目を丸くするのも仕方がないわけで。
「えーと、そうね。……二十三、四歳じゃないかしら」
 多少誤差はあるかも、と付け足す。
 それを聞いて、ジークは知らず頬を緩めた。
(あら、あらあら)
 ミオを目で追うジークを見て、リズはニマニマ。若いっていいわね、と思っていると再びドアベルが鳴った。
「失礼します。こちらで騎士を保護してくださっていると聞いたのですが」
 張りのある(二日酔いではない)低音が入り口から聞こえ、騎士が一人はいってきた。黒髪に灰色の瞳をした大柄な騎士で、ジークがそれを見て慌てて立ち上がる。