医者に見せるべきか分からないし、そもそも医者がどこにいるのかも知らない。
 それに、あの様子では一人で着替えられるかも怪しい。
 自分が手伝うのは抵抗があるけれどリズならと思う。見た目はお姉さんだけれど、アレがアレだしいろいろ見ても平気だろう。
 リズはしどろもどろな説明を繋ぎ合わせると、なんとか事態を把握し頷いた。
「分かった。じゃ、部屋まで案内してくれる?」
「うん。こっちよ」
 階段を上がり左手側の扉を指さすと、リズがノックをして中に入って行く。暫くしてバタバタと音がし、悲鳴……は聞かなかったことにしよう。
「終わったわよ」
 数分後静かになったところで、ふぅ、と息を吐き出てきたリズの手には騎士服。
 まさかひん剥いたのでは、と思うも聞くのはやめておいた。
 濡れた服を洗面台に置き、ミオは改めてリズと一緒に部屋に入る。脱ぎ散らかしていた服はぎゅっと端に寄せ下着はベッドの下に蹴り入れといた。
 棚から救急箱を取り出し見れば解熱剤が数錠入っていたので、とりあえずそれを飲ませることに。
「ジーク、薬のんで」
 手渡すと虚な目で受け取り疑うことなく口にした。素直過ぎて老婆心ながら心配になる。
「多分、冷たい川にずっと入っていたから熱を出したと思うのだけれど。リズ、傷口から菌が入ったってことあるかな?」
「うーん、無いとは断言できないけれど、見たところ化膿したり膿んだりはしていなかったわ。っていうか擦り傷よね、あれ。服に着いていた血と傷口の深さが一致しないのだけれど」
 見下ろしてくるリズの瞳の奥が心なしがヒヤリとする。
「えーと、それについては下で説明するわ」
「分かったわ。ところでこの部屋、何かあったの?」
「……」
 ミオはツイと視線を逸らした。

ひとまず階段を降り、リズはカウンターの定位置に、ミオはキッチンへ向かう。
 湯を沸かし、リズが出勤前にいつも頼むアーティチョークティーを淹れる準備をしながら思い出した。
(そういえは、摘んだブルーベリー置いてきちゃた)
 外を見れば夕暮れが始まっているので、今からは取りに行けない。鳥が摘んでいないことを願おう。
「私、今日、バーを休みにしようかしら」
「どうして?」
「だってミオ一人よ。不安じゃない」
「確かに、容態が急変したらと思うと不安だけれども……」