えんじ色が良く映える、黒色のセーラー服と学ラン。
桜川高校の冬服を着て挑む、文化祭でのステージ発表。
俺たち、制服バンドだ。
ステージでの衣装は自由なのだが、俺たち軽音部は敢えて制服をチョイスしている。「制服に楽器って格好良いじゃん?」という呑気な大哉先輩の発案だけど。
「お前ら制服なのに、何か格好良いな……! 羨ましすぎる。先生もギタリストとしての血が騒いで仕方ないぜ……!」
「涼華ちゃんも一緒に弾けば良いのに~」
「ふっふ~。将来の世界的ギタリスト・内山涼華様だからな。そう簡単に先生のテクニックを披露するわけにはいかないのさ……!」
「何言ってんだよ」
辛辣な大哉先輩の一言に、皆から笑いが湧き上がる。
少しだけ緊張していた軽音部のメンバーだったが、その笑いで何となく緊張が解けた気がした。
「よっし、じゃあお前ら本番だ。軽音部、ぶちかまして来いよ……!!」
「はい、先生!!」
大哉先輩を筆頭に皆でステージに登り、各々が持っている楽器などをセッティングする。
そうして準備ができた人から莉奈先輩にアイコンタクトを送るのだ。
全員と目が合ったことを確認した莉奈先輩は、1回大きく頷いてドラムをドンッと打ち鳴らした。
「いっくよ~!! ワン、ツー!!」
いつもの掛け声で始まる曲の演奏。
プレハブ小屋とは違う響き方をする俺たちの音色。
数百人いる生徒たちには、どのように届いているかな……。
文化祭実行委員会の照明係が上手にカラフルなライトを当ててくれることに、アドレナリンが湧き出して止まらない。
初っ端に披露するのは、俺たちのオリジナル曲『青春!恋慕唄』
弾けば弾くほど大好きになる、この曲。
くさく感じた歌詞も、今はそう思わない。皆で作り上げた歌詞って本当に不思議だ。
曲は終わりに近付くにつれて、どんどん音が力強くなっていく。
皆の音が1つになるこの感覚が本当に堪らない。
俺、本当にここの軽音部に入って良かった。
弾きながら頭の片隅で、そんなことを密かに思う。
曲の終盤、最後の音を掻き鳴らし、ジャーンと各楽器が余韻を残しながら皆で右手を挙げると、体育館全体から割れんばかりの拍手が鳴り響き始めた。
客席の生徒たちの笑顔が眩しくて、思わず涙が滲みそうになる。
しかし、軽音部の演奏はまだ始まったばかり。
俺たちは鳴りやまない拍手に向かって一礼をし、皆で大きく声を張り上げた。
「皆さん、こんにちはー!!!」
「俺たち」
「私たちは」
「桜川高等学校、軽音部です!!!!」
響け、僕らの『青春!恋慕唄』 終