夏休みに入った俺たちは、毎日変わらず傾斜のきつい坂を上って軽音部の部室に集まった。

 エアコンが付いているとはいえ、熱のこもるプレハブ小屋。俺たち軽音部は肌に汗を(にじ)ませながら、作詞作曲の作業を行っていた。


 あの日海浜公園で話し合って以降、皆で俺の詩を何度も練って『詩』から『歌詞』へと変貌(へんぼう)させた。
 やっぱりストレートで、(ほの)かにくささを感じる歌詞に思わず(もだ)えそうになってしまう。けれど、これは5人で作り上げた歌詞だ。何物にも代えられない、大切な……俺たち5人の歌詞。もうこれ以上も以下も無い。



「うぉーい、おはよ。みんな」
「涼華ちゃん! おはようございます」


 大きな紙袋を抱えて部室に入ってきた内山先生は、その中から沢山のお菓子やジュースを取り出して机に並べた。そして並べ終えるとその場で正座をして、小さく頭を下げる……。


「みんな……すまなかったな。特に西園寺。お前には本当に迷惑を掛けた。私がちゃんと皆に話していれば良かったのだが。本当に、すまない。これらは詫びだ。今日は皆でパーティーをしてくれ。学校の許可は得てある」
「ええええ、涼華ちゃん! やめてよ!」
「そうですよ内山先生。俺は別に気にしていませんし……」


 とか言いつつ、皆の目線は机の上……。
 ニヤァっと笑うと、内山先生もニヤッと笑って5人で先生の周りを囲んだ。


「だけど、これはこれ!! 涼華ちゃん、有難く頂きます!!」
「おうよ!! パーッとやって、その後また頼むよ!」


 内山先生がパンッと1回手を叩き、突如開始されるパーティーと言う名の……何だろう、これ。内山先生の謝罪会?

 そんなこと考えてまた、1人口角が上がる。
 俺たち軽音部は、この日ばかりは作詞作曲やバンド練習の手を止めて、お菓子やジュースなど、皆で思い思いに食べて飲んで……先生も含めた6人でいっぱい楽しんだ。