「恋焦がれて…苦しくて。君を想うと…切なくて……って。あぁぁぁもう！！　思いつく言葉が全部くさい！！」

　頭を全力で掻(か)きむしり、目の前にあるノートを天井目掛けて投げ飛ばす。
　くさい言葉しか思いつかない俺には、作詞の能力なんて無い。

　無理なんだ、俺には向いていない。

　背後にあるベッドに倒れるように飛び込み、天井を仰ぐ。

　歌詞は…神崎(かんざき)に書いてもらおう。
　そうしよう。

　１年生のくせに、作詞能力があって…ベースが上手くて…歌も上手い。
　しかも長髪でイケメンなその男の名は、神崎(かんざき)大輔(だいすけ)。その上クールな見た目に女子も放っておかない。


　一方俺は、いまいちパッとしない高校２年生。西園寺(さいおんじ)柊斗(しゅうと)。
　名前負けしているなんて言われるのも日常茶飯事で、名前に釣られてやってきた女子にガッカリされることもしばしば…。

　名前に負けているなんて。
　そんなこと、俺自身が１番良く分かっている。

　俺はただ…ギターが好き。
　他の人が俺を見てどう思っても良い。
　所属する軽音部でギターを弾く。それだけで、俺は満足なのだから……どうか放っておいてくれ。