その後も医学部や薬学部、看護学校などについて書かれている本を読んだが、どれも難しかった。それに、解剖の写真が出てきた時には思わず目を背けてしまった。人の体を知るためには臓器のことを知らなければならないので解剖は必須なようだが、それに向き合い続けるのは自分には無理だと思った。医療に携わることは諦めるしかなかった。でも、困っている人に手を差し伸べるために何かをしたいという気持ちは変わらなかった。だから医療以外で何かできないか探し始めた。病気じゃなくても困っている人が大勢いるはずだからだ。そのためにはどんな仕事があって、その仕事がどんな役立ちをしているのかを知らなければならない。図書館に(こも)って仕事に関する本を片っ端から読んだ。
 当然と言えば当然だが、知らないことだらけだった。こんなに色々な職業があるとは思わなかった。中にはよく知っている歌手や女優、警察官や消防士のような職業もあったが、ほとんどは知らない職業ばかりだった。そのことに驚きながらも色々な職業の本を読みながら、興味を持てそうな仕事を探した。
 ある日、『公務員の仕事』という本に出合った。その中に、国家公務員という言葉が出てきた。国の機関で働く仕事だった。行政府の仕事、立法府の仕事、司法府の仕事が紹介されていた。どれも難しくてチンプンカンプンだったが、中央省庁の仕事が書かれている箇所に何故か惹かれた。政治、経済、外交、防衛、国土保全、産業政策など、国の根幹にかかわる仕事だ。日本国民に奉仕する仕事だと書かれていた。〈日本国民に奉仕〉という言葉に興味を惹かれたので、もっと身近なことが書いてある箇所を探した。するとこれだと思う箇所が見つかった。教育文化省の紹介ページだった。使命と政策目標について書かれたところに『教育とスポーツの振興を未来への投資と位置付け、「世界に冠たる幸福大国」を実現する』と書いてあった。
『教育とスポーツ振興は未来への投資』
 この言葉に何故か感動した。