あるポカポカ陽気の日だったワン。僕は日向ぼっこしながら、うとうとしていたワン。そこは徹が命を落とした、中原街道沿いのひかりヶ丘交番のある交差点だったワン。虹色の交差点。その真ん中で、徹兄さんは笑っていたワン。
「チャーリー」
「徹兄さん、そこにいたら危ないワン! 今助けに行くワン!」
僕は徹兄さんの方へ、猛ダッシュしていったワン。最近は足腰が衰え、以前のように走れなかったのに、この時は若いころのように走っていたワン。
「チャーリー」
「徹兄さん!」
優太君の声がしたのは、その時だったワン。
「チャーリー、待って。行かないで! 僕を一人にしないで」
「優太君、もう君には香子ちゃんがいるワン。もう君は一人じゃない。これからは、自分の力で立ち上がって、強く生きてほしいワン」
後ろ髪惹かれる思いだったが、優太君のために、僕は徹兄さんのいる世界へ旅立つワン。そこで今度こそ徹兄さんを守るワン。
僕は虹の向こうにいる徹兄さんめがけて走っていったワン。すると徹兄さんの姿は虹のかなたに消え、僕はトラックに跳ねられたワン。

「チャーリー」
「チャーリー」
「チャーリー」
「チャーリー」
気が付くとそこには、優太君、香子ちゃん、年老いた健太パパ、志保ママが僕を覗き込んでいたワン。ありがとうワン! 瞼を閉じると、僕は静かに眠りについたワン。