それから六年。
何かと理由をつけて、帰省しないようにしてきた。
そんな私に両親は、実家の居心地が悪いせいで家を出たと勘違いしているようだけど、違う。
全て勝手な都合。
健ちゃんが好きだなんて、言えるわけない。
両親も、健ちゃんの両親も、私達を本当の兄妹みたいに仲が良いと育ててくれたのだから、その形を壊せるわけ。
だから今回の帰省も気乗りしなかったけど、少し淋しそうな電話越しの母に、「お盆に帰る」と言ってしまった。
色々と考え過ぎて、肝心の帰省日を一日間違えてしまうぐらい、私はまだ「健ちゃん」を「お兄ちゃん」に戻すことは出来ていない。
やはり、恋は理屈ではないようだ。
奈緒子とは今も連絡を取っているけど、変わらず健ちゃんの話はしてこず、仕事や友達の話ばかり。
それは高校生の頃から同じで、私が以前より「実のお兄ちゃんみたいな存在」と言っていたから、その関係を壊さないように配慮してくれていると分かっている。
それに加え、奈緒子は私の気持ちを知らずに健ちゃんの告白を受けている。
それが分かっているからこそ、今まで親友を続けられたのだと思う。
知られなくていい。この気持ち。いや、誰にも知られてはならない。この気持ちを。