しばらく色んな友人と様々な話をしていたら、ふとドアが開く音がしてその方向を見ると、彼が居た。今、遅れてきたのだ。安心しきっていた。久しぶり友人たちに囲まれ、彼が見当たらないことに安堵しお酒を楽しく飲んでいた。
 けれど、彼は遅れてきただけだった。

「ごめんごめん!残業押し付けられちゃって遅れちまった〜!がちでごめん!」

そう言って笑う彼にわらわらと人が集まる。やはり今も昔も人気者には変わらないみたいだ。
その輪の中に入ろう?と声をかけてくれた友人もいたが、なんだが気まづくて私はいいよ。と返事をしてしまった。
 それがきっかけで、私はお酒の席で1人になってしまった。みんな彼の話題で持ち切りだったが、私はそれについて行けなかった。

 お酒もある程度飲んだし、みんなと沢山話せたからつまらなくなる前に帰ろうかな…。
そう思っていた矢先、先程まで遠くにいた彼が私に話しかけてきた。

「美優?だよね。久しぶり!成人式以来だよね。」

「え、あ、弘樹(ひろき)…ひ、久しぶり。」

 思わぬ声掛けに思わず変な声が出て慌てる。なぜ私にわざわざ声をかけにきたの…?そんな疑問を胸に抱きながら話を進める。

「わざわざ話しかけに来てくれるなんて。どうかした?」

「なんかつまんなさそうだったからさ。もしかして、もう帰っちゃうのかな〜って思ってこっち来た。」

「なんだ、バレてたのか。うん、そろそろお暇しようかな〜って思ってたところ。弘樹はまだいるでしょ?みんな二次会どうする〜って話してるみたいだけど。」

「んー、俺も帰ろうかなぁ。」

「え?帰るの?」

「うん。俺ダラダラした飲み嫌いなんだよ、実は。」

そう言って弘樹は久しぶりの笑みを私に見せる。その笑顔に胸のときめきが隠せない。

「そっ、か。じゃあ二次会行かないで2人とも帰る感じだね。」

上手く言葉が出ず、こんなしょうもない事をつい言ってしまった。

「…もし美優が良かったらさ、このあと2人で飲み直さない?」

急に慎重な面持ちでそう言った弘樹。それは、どういう意味?同窓会で再開した元恋人との復縁率というどこかで見た数字がつい頭に浮かんでしまう。いや、そんなことを理由に声をかけたのではない。そう思い、返事をした。

「…いいよ。2人で、飲みなおそっか。」

そう答えたのは、少し期待している自分がいたから。