そうして思いがけず決まった5年越しの同窓会に、期待半分恐怖半分といったところだった。だが、まだ別に行くことが確定になったわけじゃない。明日職場に早上がり出来るかを聞かなければならない。その許可が出ない限り、いくら覚悟を決めても行きたいと願っても行くことは出来ない。
 
「明日は運命の日だなぁ…。」

一人暮らしが長いと、独り言が増える。
私はアパレル系の仕事をしているので、休める日は中々ない。私の会社はシフト制なので時間外に上がることは滅多にない。私は用事があってどうしても、ということも今まで無かったので初めての試みだ。果たしてそんな簡単にいくのだろうか…。
 そんな不満を抱きながら明日の支度をし、ベッドに沈む。明日はどんな一日になるのだろうと、仕事に行く前の日に今まで感じたことの無い感情を思い浮かべながら眠りについた。

 次の日、いつも通り身支度をし電車に揺られ通勤をする。

「おはようございます。」

 そう言ってテキパキと仕事の支度をする。そうして仕事の支度が終わると、1つ深呼吸をしてから店長に話しかける。

「あの、店長少しお時間いいでしょうか。」

「ん?いいけどどうしたの?」

 いつも従業員に優しく誰に対しても物腰の柔らかい店長はゆるく微笑みながら聞き返す。

「実は、今週末高校の同窓会がありまして…。仕事を、早上がりさせて貰えないでしょうか…?」

 聞いた事のないことを聞いたため、思っていたよりも緊張する。怒られたりしないだろうか…。私情で仕事に支障をきたすなんて、何を言っているんだと言われるかもしれない。
 だが、そんな心配は1ミリもいらなかった。

「あら!そうなの〜!?いいじゃん!行ってきな行ってきな!金曜日はいつも夜お客さん少ないし、念の為夕方からバイトの子入れておくから気兼ねなく行ってらっしゃい。美優ちゃん、なかなか有給も使わなければ早上がりとか当日休みもないから勝手に少し心配してたのよ。息抜き出来てるのかな〜って。
だから全然気にしないでね?むしろ私は美優ちゃんがそうやって高校の子達と話す機会があって、会う機会があるなら行って欲しいわ。」

 思いがけない優しさに溢れた言葉に返事が遅くなってしまう。優しい人とは知っていたが、ここまでだったとは…。

「あ、ありがとうございます…。色々と。あ、そういえば実はまだ服とか色々揃えてなくて…今日仕事休憩の合間に少し行く時の服を見てもいいですか?」

「え!そうなの!?もう〜、金曜日までもうほとんど時間ないんだから急いで探しなさい!今日の美優ちゃんの仕事の本命はこれね。もちろんいつも通り仕事してもらうけど、早上がりを許してあげる代わりに今日行く服や鞄、靴全部決めること!良いわね?」

 そう言って店長はおちゃめな笑顔を見せた。こう言われてしまったら何も言えない。しょうがない、今日当日身につけていくものを決めなければ。
 だってそれが、店長の最大限の優しさで気遣いなのだから。