「じゃ、じゃあ調べるからいい!」

油断して見とれてしまった数秒を取り返すようにスマホを取り出して調べようとすると

「だめ。」

「え?」

スマホを触ろうとする手を静止させられてしまい困惑していると、
真剣な目つきで、獲物を捕らえたような瞳で彼は続きの言葉を言った。

「今はせっかく2人でいるんだから、スマホじゃなくて俺のこと見ててよ。俺との会話に、時間に集中して?」

思考が、止まった。完全に。
今、私はなんて言われた?
俺のこと見てて?集中して?
いや、その前に一人称が…。

頭の中をフル回転させ、答えがない回答を探し回る。当たり前だが答えが出ずあたふたとしていると、彼が笑った。

「お姉さん、動揺しすぎだよ。ちょっとからかっただけ。調べたいなら調べていいよ。もうさすがにあんな風に止めないから。お好きにどうぞ?」

そんなことを言われてももう頭は真っ白で…。

「だ、大丈夫!ほら、お酒も届いたところだし。」

このタイミングでお酒が届いてくれて本当に助かった。
今届いてなければ私はまともに会話なんてできていなかっただろう。

「本当だ。じゃあ、乾杯しよっか。」

その一言でグラスを交わし、私たちの一夜の幕が、上がった。